夢の中の君は。【3】 (ページ13)

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非常階段へと連れて行かれ、腕を離される

「ごめん、痛くなかった？」

優しいところは変わらない

懐かしさに思わず鼻の奥がツンとする

「大丈夫…えと、その…久しぶりだね」

「久しぶり。ちょっと痩せた？」

「あ…うん。そう、かも」

ぎこちない会話から醸し出される空気に俯く

「これ元太から。落としてたってよ」

そう言って渡されたのはミントグリーンの名刺入れ

元太くんと偶然会った日、
道端で落としたと思っていたのに

「ありがとう」

受け取ろうとするも、
強い力で海人が握っていて離す気配がない

「あのさ、俺言ったよね
俺なんかじゃなくて、海斗のところ行けって」

「それは…無理だよ、そんなの
海人をこれ以上傷つけることなんてできなかった」

俯くと、はあ～と大きなため息をついて
ぽん、と私の頭に手を置く

「…最後くらいさ、俺にだっていい思いさせてよ」

「海人…ごめんなさい、本当に傷つけて」

「ほんと、傷ついたよ。
でもね、俺のために蓋をしてるAを見る方が
もっと傷つく、俺が離れた意味ないじゃん」

おねがい、と頭に置かれた手が後頭部に回ったけれど

迷ったようなそぶりを見せたあとそっと離れる

「…ね、お願い」

「わかった、ありがとう海人」

深々と礼をすると海人がぽつりと、

「1時間後、地下駐車場横の自販機」

とだけ呟いて、会議室の方へと歩いて行った