＿episode15 ページ18
＿side.羽井 翔
頭の中に直接語り掛けられるような感覚。
聴こえてきたのはあのゲームマスターの声だった。
『はいは〜い！ ゲームマスターのアルファだよ〜！
ミッションの時間だから、説明をするね！ 今回のミッションは〜……黒いパズルのピースを探せ！
このフィールド内にいくつかの黒いパズルピースが転がっているから、がんばって探してね！
制限時間は夜が明けるまで！ それまでに見つけられなかったら、ゲームオーバー、だよ♪
それじゃあ、がんばってね〜！』
たったそれだけ？と少し拍子抜けしたが、なるほど、辺りはすっかり暗くなっている。
ここで黒いピースを探す、というのは少し難しいかもしれない。
隣で同じことを聞いていたであろう、愛する弟、翼を見ると目が合った。
翼「がんばろうな、兄さん！」
翼はニコッと微笑んで言った。
翼はゲーム中は基本的にこの人格で過ごしているらしい。
「この人格」というのは、彼が多重人格だからだ。
周りの人たちはそんな翼を可哀想だとか気持ち悪いだとか、いろんなことを言うけど、僕にとっては皆大切な弟だ。
皆気遣いができて優しい子だと知っている。
だから翼を手を出す奴がいたら、傷つけるやつがいたら＿＿＿
翔「うん、そうだね」
絶対に、絶対に許さない。
地面を眺めて探すがなかなか見つからず、そのうち頭上には月が昇ってきてしまった。
いったん休憩しよう、とその辺にあった瓦礫の一つに腰かけた。
説明し忘れたが、今僕らがいるのは広いビル街のような場所だ。
しかしビルはほとんど全てが崩れ落ちており、まだビルの形を保っているものも鉄骨がむき出しになっていた。
非常に荒廃した雰囲気で、どこか不安感を煽る。
休憩していると、二人のお腹が『ぐぅ〜』と鳴った。
二人で顔を見合せて、クスッ、と笑った。
今度は食料探しもかねて探索を再開した。
そして、今はビルの中のキッチンのような場所。
流し場には謎の肉が落ちている。
その傍に服が何枚か散らばっている。
そして、極めつけは。
ゴミ袋の中に入れられた「人間の頭部」だった。
頭部が抉られており、脳味噌が見えているものもある。
思わず吐き気がこみあげてきた。
“それ”は今死んだばかりにも思える艶やかさで、酷く恐ろしい。
翼も顔を真っ青にして口元を抑えていた。
やっとのことでそれを見えない場所に隠したが、脳裏にはあの光景が焼き付いて、離れなかった。
＿＿＿＿＿＿＿
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作者名：葉月/月のツッキー/陰鸚 x他3人 | 作者ホームページ：No.
作成日時：2022年6月9日 19時
