お隣、06日目 ページ6
▽
「いくよ…？」
体育館裏の倉庫の前。
なぜか俺の隣にはひょっとこが立っている。
どうやら上級生からの顔バレ防止対策のためのお面らしいけど、それにしてもチョイスがひょっとこってのはどういうことなのか。
しかしひょっとこは至って真面目らしく、俺の方を何度もちらちら見て「開けていい？いい？いい？」としつこく確認してくる。
いいって言っとるやろが。
俺がそういうと、
ひょっとこは、意を決して、扉を、開けた。
「…………」
「…………」
「……誰も、いないね」
「おらんな」
そこはいつも通りの、埃と土が混ざったような空気が立ち込める散らかった倉庫だった。
ツムの姿は見当たらないし、ましてや誰かが入ったような痕跡もない。
「どういうことや、ひょっとこ、お前見たんやろな？」
「み、見たよ！絶対こっちきた！」
おかしいなあおかしいなあと言って焦るひょっとこは側から見たら滑稽だけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
ツムはどこや。どこにいったんや。
キョロキョロと辺りを見渡していると、体育館から聴き慣れた音が聞こえてきた。
(バレーボール…？)
「って、待てやひょっとこ！」
気付いたら隣にいたひょっとこは体育館裏口へと走り出していて、俺もそれに続く。
なんや、もしかしてバレーボールを使っていじめられとるんか。
頭に浮かぶのはツムが大量の3年生に囲まれ、バレーボールをひたすらぶつけられている姿。
シュールすぎるが、実際そんなことが自分の身に起きたら怖すぎる。
ぞわわ、と鳥肌が立つのを抑え、扉に手をかける。
「開けるで…！」
「うんっ！」
ガラガラガラ！
重たい体育館の扉を開き、俺とひょっとこの視界に飛び込んできたのは___
「…なんやサム、と…ひょっとこ？」
ツムの周りを囲んでいるのは3年生。
そこまでは予想どおり。しかしその表情は柔らかく、とてもじゃないがいじめをしているようには見えない。
「な、なにしとるんやツム…」
「なにって…
こいつらにバレー教えとったんや」
「おっ！これは有名な…侑さんの双子の！治さんですね！？いやあ俺たち侑さんのプレーに魅せられてですね！直々に指導を」
「全員揃って死ねや」
二度とツムの心配なんかせん。
そう心に誓った、中学一年生の夏の出来事である。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
