お隣、38日目 ページ38
▽
泣きそうな顔で俺を見るA。
…悔しいけど、俺はAの笑った顔は好きや。阿呆みたいにケラケラ笑っている姿を見ると、なんだか気が緩んで、安心する。
だけど、Aが自分のことを蔑ろにして、自己嫌悪で死にそうになってる時の顔は、嫌いだ。
「ほんま、変わってへんな」
「ご、ごめんなさ、い……」
「謝んなや」
Aはまた俺から目を逸らす。なんですぐ、そうやって逃げようとするんや。そんなんやから、あの日から何も変わってへんのや。
不満ばかりが溢れ出てくる。Aはそれを察したのか、一層顔を歪ませた。
「あの、もう暗いし、…」
「帰らへんぞ」
「っ、でも…」
Aはどうしても俺から逃げたいらしく、帰る口実を頑張って探している。そんなことしたって無駄やのに。俺は何が何でも帰らん。帰らせへん。
そんな俺の気持ちがAに伝わったのが、少し怯えたような表情になる。
コロコロと変わる表情は見ていて飽きないが、そんな顔を見たいわけじゃない。
「なあ、『良い子ちゃん』はやめれたんか？」
「…………」
「まだ『自分のせい』とか、下らんこと考えとるんか？」
俺の問いに、Aは答えない。
きっと図星だからだろう。ずっと視線をきょろきょろさせている。
「ええか、何度でも言うで、よお聞け」
「………うん」
「離婚はAのせいやない。誰もお前のことを責めたりしてへん。
ええか？お前のことを責めとるんはな、お前だけや。
お前が自分で勝手にそう思って、勝手に苦しくなっとるだけや。」
Aはぼたぼたと涙をこぼす。
きっと『あの日』も、こうやって泣いていたんだろう。まるで『あの日』の再現をしているみたいで、複雑な気分だ。
「でも、…私なんか」
「『私なんか』って言うな」
「………」
『私なんか』とか『私のせいで』とか、そんな言葉ばっかりで、嫌になる。誰がそんなことを言ったんだ。誰がお前のせいだと責めたりしたんだ。
きっとAは、俺と違って気が弱い。人のことばかり気にする。自分に自信がないから、なにかあっても人のせいにできなくて、全部自分が悪いと思い込む。
それが積み重なって、自己肯定感が枯渇している。
人の厚意を無駄にしてることにも、他人からの言葉を無視していることにも、気づけないくらい追いつめられている。
Aは怯えたような顔で俺を見つめていた。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
