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｢うぃーす｣｢おつかれー｣なんて声を出しながらドアを開けるふたり、通称ばど。今日はレギュラーで出させてもらってるお昼の番組の後に全員での仕事があったから、そのまま2人で来たらしい。この後にも2人での仕事があるというのに、仲の良い事だ。
おつかれ、おはよう！と挨拶が飛び交う楽屋で、まずは相談だろうと呼び止めた。
｢淳太｣
周りに気づかれぬよう小声の俺の声にも反応した淳太は、そのままソファに座っている俺の隣に並ぶ。
｢ん、どした？｣
話しかけられた理由がよく分かっていないのか、きょとんとしてこちらを伺うその顔は、もう何年かで40代に突入するとは到底思えないほど幼い。
淳太も結構、受け顔やんな……その場合、相手は、
｢のんちゃん？｣
妄想の世界へ片足を突っ込んでいた俺を引っ張りあげた彼に顔を向けて、本題へと脳を切り替えた。
｢しげに、かみちゃんとのこと聞いた｣
そう言って目を合わせれば、数回瞬きをして、嬉しそうに口を開く。
｢んふふ、まじで？どやった？｣
｢最初はな、なんもないで？ってへったくそな誤魔化し方してたんやけど、問い詰めたらふつーに吐いた｣
｢あー、やりそうやなあ！あいつも意気地無しやから｣
｢ふは、たしかに！｣
｢知っとる？はじめての相談であいつ、『どうしようじゅんた、おれ、おれ、』つって泣いてたんよ？こんなおもろいのあるか！って俺動画撮ってしもた｣
｢んははは！ほんまに！？なっさけない男やなあいつ！｣
｢こないだもさあ、──｣
ひとしきり笑ったあと、練習台、の話をすると、案の定彼は｢練習台？｣と首を傾げる。
やっぱりこの反応で合ってるよな。俺もそうやった。うんうん、と言わんばかりに目を閉じ腕を組んでうなづいて見せれば、益々角度を増す首。もうほぼ真横になっとる。
｢練習台。なんの練習台かは教えてくれへんかったけど、文脈的にあーんのやんな？｣
｢そうなるなあ……。でも、なんで練習？｣
｢それがわからんのよ。しげに聞いても俺からは言えんー、とか神ちゃんに聞いて！ばっかりで｣
｢……ふーん？改めて、シャイやなあ｣
｢ほんまにな。もうちょい押せればなんとかなるかもしれへんのに｣
｢まあそれは追々やな。しげも神ちゃんも今幸せならなんも言われへんわ｣
｢またなんかあったら報告するわ。俺が伝えたってしげには言わんでな？怒られる｣
｢だいじょーぶ、わかっとるよ｣
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作者名：朔太郎 | 作成日時：2022年12月10日 21時
