完 結 編。

14 ページ15

聞かされた。

鬼殺隊のこと。時透無一郎のこと。そして、私の事。
何一つ、私の思い出には引っかからなかった。

*

「…」

時透くんは手を繋いでくれた。左手は戦いで失ってしまったらしい。私の右目も、同じ戦いで失ったそうだ。

「……あの、時透、くん？」
「…なに？」
「…その…私、…鬼との戦いでさ、迷惑かけてなかった？」

右目が無い。それはすごく不便なことだった。距離感が上手く掴めず、歩くのも少し難しい。そんな中刀を握るなんて……相当邪魔だったんじゃなかろうか？

「そんなことない」

それは予想外な返答だった。

「…Aがちゃんとしてなかったら、僕も、玄弥も、死んでた」
「げんや？」
「一緒に戦ってた仲間…それに、最後は君が刺したところから崩れていったんだよ」
「…そうなんだ」

ちょっとだけ時透くんの方を見て、またふらついて、慌てて立て直した。
眼帯で覆われた目に手を添える。

この目は何を見ていたんだろう。
きっと、悲しいことも、沢山あっただろう。

でも、なんだか、すごく大きくて大切な記憶だった気がするんだ。

思い出したい。
思い出したい。
…思い出したい。

15→←13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す