影に咲け、悲哀の花【短編集】 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:835 hit

アスターページ1

「もう、終わりにしましょうよ」

ぴりぴりと舌を刺すような感覚。
グラスに残ったスティンガーを飲み干し、「同じものを」と告げ。

「は、？」

隣の彼はアホ面。何よ、そんなぽけっと口を開いちゃって。
そんなところ、嫌いなの。

薄暗いバーの中、きっと私の胸の中は誰より黒い。
ぐずぐずに溶けた恋愛感情。おかわりの入ったグラスを掲げる。

「これっきり。ここでお仕舞い。貴方ともうさよなら。分かる？」
「待て……待ってくれ、俺が何をした」

焦んないでよ。貴方クールぶってたじゃない。キャラクターはどうしたの？

嘲る笑みを浮かべる。

「そのキャラが崩れるところ。大事なところで逃げ出すところ」

唇についたスティンガーを舐めとる。

そしてそのまま立ち上がった。

「飽きたのよ」
「……！待っ」

肩を掴む手を振り払って、お金だけ置いて、バーを出ていく。

「……大好きって言っただろ」

裏切り者。

耳に、あの男の声が届いた。

＿＿＿はん。何とでも言いなさい。
私は刺す者。最低な者。スティンガー。

一個だけ残った感情も、刺せば、ほら。嘘つきの最低になっていくの。

さようなら。