鱗滝は出会う ページ1
鱗滝は村の中にある家に鬼と共に邪魔していた。この家というよりも、この村の者達はこの女が鬼であることを知っていた。それに鱗滝はまた困惑した。鬼だというのに先程の子供もこの家の者も怖がる素振りを見せないのだ。
「この村はね、周りが山に囲まれているからか鬼の被害が後を絶たなかったんだ」
囲炉裏で焼いた魚を家主の男から渡されおずおずと鱗滝は受け取り、美味しく焼けた魚を一口食べた。絶妙な塩加減に思わず口が緩む。が、生暖かい視線を鬼に向けられて思わず顰めっ面へと変えた。
「被害は酷くてね、女子供達が標的になっていたんだ。許せないだろう?」
何が許せないだ、貴様も鬼だろう。
そう鱗滝は思ったが、鬼の瞳を見てその言葉が言えなかった。
鬼の瞳は、綺麗な藤色をしており真っ直ぐと力強い瞳をしていた。そして思わず魅入った。だがすぐに我に返る。鬼を見て魅入るとは、自分が情けなくなった。
…まさかこの鬼、魅了のような血鬼術を使ってるんじゃないだろうな、と考える鱗滝を他所に鬼は話す。
「私は何百年も前に鬼にされた巫女だ。情けない話、私は君たちの似た立場だったが鬼に致命傷を与えられてね。嫌がらせか鬼にされてしまった」
鬼はそう言って、もぐもぐと焼かれた魚を食べる。それを見て鱗滝は何とも言えない表情を浮かべた。
「鬼は歳をとらない。だとすると同じ場所に留まることなんてすれば、怪しまれるだろう?だから転々と住処を移動していたら、鬼に悩まされているこの村にたどり着いてね」
「…この村を襲っていた鬼はどうしたんだ?」
「殺したよ。これでも強いんだ」
それはそれでどうなんだ。
「春が来たらこの村の周りは満開の藤の花が咲く。一旦花が咲けば私の術で季節問わず花が咲いているように施したから、鬼は近付かないだろう。それまではここに留まるつもりだよ」
だからこの女から藤の花の匂いが…、そう思った鱗滝は2匹目の魚へと手をつけようとしている鬼へと目をやる。
「お前、藤は平気なのか?」
「いや苦手だよ。生前は藤の花が一等に好きだったのに悲しいよ」
そう悲しそうに話す鬼に、鱗滝は何も返す事は出来なかった。
「そういえば、君の名前は?」
しんみりとしてしまった雰囲気を変えるかのように鬼は鱗滝に尋ねた。
「…鱗滝」
「かっこいいね、私はA。仲良くしたくもないかもしれないけど、よろしくね」
これが不思議な鬼との出会い
160人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まはまは@みんく | 作成日時:2019年7月24日 22時