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ふらりと立ち寄ったコンビニでアイスを買って、道端で封を切った。


茹だるような暑さに耐えかねたのか、棒付き氷菓子から液体がぽたぽたと零れていく。
舌の上で溶けていく人工甘味料の氷は甘ったるい。

冷たさを感じるより早く食べきってしまった私は物足りなさに残った木の棒を眺めた。

「お前、本当にアイス好きだよな」

いつもと変わらない調子で、英太くんが私を笑う。

「……なんで溶けちゃうんだろ」
「溶けるのが美味いんじゃねえの?」
「どうだかなあ」

私もいつもと変わらないよう努めて答えた。


はらり、お気に入りのハンカチがアスファルトに落ちる。


私達の沈黙を埋めていく蝉の声がうるさい。
鳴きやめ、お前の声なんて聞きたくもないから。

生きることで精一杯なちっぽけな命にそう心の中で呟いた。

でも、合唱は止まらない。

静まり返ってしまったら最後、私は彼になんて言ったらいいのかわからないのに、その喧しさに眉を寄せることしかできないのだ。


私が黙り込んでいることに気づいたのか、英太くんが視線をアスファルトに落とす。

そのまま視線はハンカチの方へ向かって、止まる。
声が出ないのを周りが騒がしいせいにして、私は無理矢理笑みを作った。

「帰らなきゃ」

ひどく冷たい、夏の暑さすら吹き飛ばしてしまうような声が漏れる。

私の唇の動きを読み取ったのか、彼がこちらを見た。彼の顔が赤いのは先程の言葉が嘘じゃないから。
私の体温が上がっていく気がするのは今が夏だからであって、断じて恋による熱ではない。


私は英太くんが好きだ。

ラブじゃなく、ライクの方で。
でも、好意の切れ端をぽんと落とされたら私自身が感じているライクをラブに変換してしまいそうで。


それがなんだか怖くて、結局曖昧なままにして。
私は彼から逃げたのだ。

「ガラスの靴はないのだから、返事を伝える必要もないだろう」と。




時が経てば自然に解けてしまう淡い魔法は、一瞬私を浮かれさせてそれからどん底へと叩き落とした。




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つくね(プロフ) - コメント失礼致します!モノクロさんの書かれる小説が大好きなので、今回モノクロさんのオシャレな文体で推しの瀬見さんが読めて本当に嬉しいです…!これからも素敵な小説を期待しております、執筆頑張って下さい! (2018年11月5日 22時) (レス) id: 51dd67607c (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ(プロフ) - 黒波さん» コメントありがとうございます!チッスチッス!この後のことは物語の二人のみぞ知る、みたいな感じにしたかった……。黒波氏の性癖に合うような小説を書けてよかったです!本当にありがとう!! (2018年10月27日 18時) (レス) id: 2266d5aa5e (このIDを非表示/違反報告)
黒波(プロフ) - コメント失礼します!チッス!今回もハチャメチャにものちゃんワールドが展開されていて性癖ドストライクでした。これからを連想させるような書き方をするものさんの作品が好きです。 (2018年10月27日 17時) (レス) id: 8d17606e29 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:モノクロ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年10月27日 12時

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