イカリソウ『朔間凛月』 ページ4
「ずっとそばにいて」
夜闇を生きる彼は私にそういった。その言葉に嬉しくなった私は
今思うと単純で、なんて愚かだったんだろう。
凛月と仲の良い自信はあった。彼が1人の時に
私はそばにいたから。伸ばされた腕を拒むことはしなかったから。
信じていた、凛月も私と同じ気持ちでいてくれていると
否、願っていたのだ。その事実、あんずちゃんといるのを見るまでは。
「あんず〜ふふっもうレッスンは終わりでしょ?
早く一緒に帰ろうよ」
私には見せない甘い顔であんずちゃんに微笑む。
それを目の当たりにした私は傷つかないわけがなくて…
優しくあんずちゃんの頭についていた葉っぱを取り空へ放つ
風に乗せられた葉はふわふわと飛んでいる。
終わってしまったなと思った。すべて勘違いだったのだ。
凛月が私のそばにいるのは都合がいいだけで
決して女の子として見ているわけではなかった
涙が滲み、そばで泣き崩れた私は我ながら滑稽という言葉が似合っていた
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重い瞼をあげ辺りを見渡せば赤い燃えるような夕日が輝いている。
__________嫌な夢を見た。
とうに涙は枯れていて、でもまだ恋心は厄介なことに残っていた
「好き、だったなあ」
そうぽつりと呟けば枯れていると思っていたのにまだ出るらしい。
私の頬を伝った雫は誰かの細く白い指先によって受け止められた。
「誰が好きなの?」
その声に顔を上げ目を見開かせた。
気だるげな表情で指先にのった雫を口に含むと
「ん、しょっぱい」
ペロリと唇を舐め一言。見間違えるはずもない。私の好きな人。
さらさらの黒髪が開いた窓から入ってくる風に揺れる。
紅い目が私をじっと見つめて首を傾げた。
「誰がすきなの?」
さっきと同じ質問。でも隠せない苛立ちが凛月の態度に表れていた。
「なんで、そんなこと聞くの」
私は意地悪なんだ。確信がないと言えないの。
「Aに好きな人がいるって聞いたことなかったから」
突然、凛月が手を伸ばし私の耳付近の髪をかきあげた。
凛月から誕生部にもらったお揃いのピアス。
彼の瞳と同じルビー色。綺麗で気に入っていた。
「私も女の子だし、好きな人ぐらいいるよ」
刺すような視線が痛くて目をそらす。なんで、私に構うの。
あんずちゃんが好きなんでしょう。でも臆病な私は聞くことすらままならない
「ふうん、そっか。」
__________った
ぼそりと何かをつぶやいて凛月は私を引っ張った。
その勢いで首に噛み付かれ激痛が走る。
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作者名:桃 | 作成日時:2018年2月26日 20時