あなたと記憶 ページ47
ぽろぽろとこぼれる無意識にこぼれる涙。
「よもや!泣かせてしまった!」
『だ、だって、わたし、だとは』
「むう、これでも沢山君に気づいて貰えるようにしたんだが!」
確かに、今まで何度も私のことが好きなんじゃないかと思った瞬間はあった。
本当に私だとは思わなくて、困惑している。
泣いている私をそっと抱き寄せて背中にぽんと手をおく。
『きょうじゅろ、くん』
「ようやく気づいてくれたんだ」
すりっと私の頭に頬を擦り寄せるあなた。
「好きだ、A」
その言葉を改めて言われてしまう。
夢か現実かわからず、ふわふわとした気持ちになる。
ああ、どうしよう。
夢ならば覚めないでほしい。
私の手をぎゅっとにぎりしめるあなた。
「久しぶりに手を繋いだ日に君に聞いただろう?何時ぶりか、って」
『う、ん』
「実は覚えているんだ、12年振りだって」
その言葉に目を見開く。
彼の顔を見ると頬を少し染めて目を細めて笑っていた。
「君を好きになった日だ。花畑で俺に花冠を作ってくれたあの日」
『覚え、て』
「ああ!君を初めて抱きしめた日も覚えている!君から額に口付けをされた回数も、君が俺の髪を結ってくれた回数も、全て」
覚えているんだ、と優しく笑うあなた。
私が覚えていないことも全て、あなたは覚えていた。
君が何度俺に微笑みかけたか、
君が何度俺の傷を手当してくれたか、
おかえりと言ってくれたか、
いてらっしゃい、と背中を押してくれたか。
きりがないな、と笑うあなたはすごく照れくさそうだった。
さすがに覚えすぎていて怖くはなったが、それも彼なりの愛なのだろう。
「俺はずっと君を見ていた!考えていることは君のことばかりだ!」
あなたは私を真っ直ぐ見つめる。
「だからあの日、君の口から好きな人がいると言われた日は気が狂いそうだった」
なんと表情豊かなのか。
しゅんと眉を下げるあなた。
私も沢山泣いたんだよ、あなたに好きな人がいると聞いて。
「しかし、直ぐにその好きな人が誰だかわかった!」
『え、』
「俺は鈍感ではないのでな!勘は鋭いほうだ!」
まさか。
あの日からずっとバレていたということなのだろうか。さすがにそれはありえないはず。
ふと思い出す。
あなたに好きな人がいると聞いて明らかに暗い顔をした私に何かを呟いた後に自分の口をおさえ、顔を赤くする杏寿郎くんを。
「君は俺の事が好きだろう?A」
その笑みに目を見開くしか無かった。
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ねむこ(プロフ) - 柑橘蛍さん» 柑橘蛍さんコメントありがとうございます〜!わかります.....推しは尊いですよね....読んでくださってありがとうございますー! (2021年2月12日 12時) (レス) id: 81a8bcf75d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘蛍(プロフ) - 今日も今日とて推しが尊い…! (2021年2月10日 0時) (レス) id: c6603d0c65 (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 晶子さん» はじめまして!コメントありがとうございますー!記憶したい!?!そこまでですか〜!?感謝です... (2021年1月17日 0時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
晶子 - 初めまして!何ですかこの神作品は!?最高です( ; ; )何度も読み返してしまいます。。!!もう記憶してしまいたいくらい!! (2021年1月15日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
ねむこ(プロフ) - 沙希さん» こちらこそありがとうございます...!!!!!!長編なので大変でしょうけど最後までよろしくお願いします...! (2021年1月10日 13時) (レス) id: fdabd54cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむこ | 作成日時:2020年10月28日 8時