あなたが、【煉獄杏寿郎】

あなたとからかい ページ32

『起きたのなら起きたって言って欲しいな』

「うむ！起きた！」

『遅い....』



彼から顔を隠すようにぐりぐりと頭を押し付ける。
何が"昨日の仕返し"だ。

恥ずかしくて仕方がない。



「はは！耳まで真っ赤ではないか！」

『み、見ないで』

「無理だ！照れている顔も見たいぐらいだ！」

『駄目！』



からかい上手になってしまったのか。
ははは！と本当に楽しそうだ。



「で、つけてくれないのか？」

『つけません。付け方も分かりません』

「昨日俺が沢山お手本をしてみせたじゃないか」

『千寿郎くんに怒られてたくせに...』

「よもや！聞かれていたか！」



失態失態！と元気よく言うあなた。

急に彼は私の頬に手をやり、ぐいっと顔を上げさせ、私の顔を見た。

真っ赤なままの私の顔を見て目を細める。

そして私の額に口付けをする。
まるで愛おしい人に口付けをするように。

固まってる私を見るあなた。


「うむ、かあいいな」


へらっと柔らかく笑うあなたを見て、目を見開く。
朝日に照らされて、とても美しかった。


「おはよう！A！」

『う、ん。おはよう』


先程とはうってかわってにこっと笑うあなた。
一体あなたは私をこれ以上好きにさせてどうするんだ。

私はそっと顔をよせ、彼の前髪をあげると額に口付けをする。


ちゅ、っと可愛らしい音が響いた。


唇をはなすとあなたが目を見開いたまま固まっているので、つい笑ってしまった。


『ふふっ、仕返し』


悪戯っぽく笑うとあなたは両手で自分の顔を隠す。


「か、んべんしてくれ」



弱々しく言うあなた。

しゅぅうっと音が出そうなくらい耳まで真っ赤だ。
まったく、可愛いのはあなただ。

彼のその姿に笑みを零しながら頭を撫でる。


私の前ではただの煉獄杏寿郎になる彼がこの上なく愛おしくてたまらなかった。

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