あなたが、【煉獄杏寿郎】

あなたと動揺 ページ11

「すまなかった！」

『杏寿郎くんが謝る必要はないよ』


しばらくして彼は私の身体を離し、謝罪をしてきた。


何に対しての謝罪か分からないけど
杏寿郎くんが悪くないことは明確だ。


だからといって宇髄さんが悪いのか？
いや、分からない。


そもそもなんで求婚されたのかが分からない。


しかし、抱きしめられている間、
私は少し状況の整理ができたかもしれない。


結構な時間抱きしめられていたのに少ししか状況の整理ができていないのはお察しの通り。

好きな人に抱きしめられてすごく動揺していたからだ。


彼に抱きしめられるなんて
彼の大切な母が亡くなった時以来だった。

その後、杏寿郎くんは店を閉めるのを手伝ってくれた。


『忙しいのにありがとう』

「うむ！見回りをしていただけだから大丈夫だ！」

『仕事熱心だね、いつもお疲れ様』

「ありがとう！」


机を2人で囲み、お茶を飲む。
いつもの調子に戻った彼を見て安心する。



『ごめんね、足止めしちゃって。じゃあ見回りg』

「ああ、そうだ。宇髄が言っていたあれってなんだ？」


私の言葉を遮るようにして言う彼。
聞いたこともないくらい、優しく、
でも強制力のある声色だ。


彼の顔を見ると少し怒っていることがわかった。


あなたもそんな顔ができるのか。


『あー...えっとなんというか...』

「大丈夫、俺は君に怒っている訳じゃない。
教えて欲しいだけだ。教えてくれないか」

『......嫁にならないかと言われました』


ガタンッ！と大きな音を出し机に足をぶつけるあなた。


珍しく動揺しているのか理解ができていないのか、
今は私と同じ気持ちだろう。



『だ、大丈夫？』

「ああ！問題ない！問題あるのはあいつの頭だ！」



まあ確かに。否定はできない。
出会って数十分しか一緒にいなかった相手に求婚をするぐらいだ。


なんて失礼なことを考えていたら
あなたは座り直し、私をじっと見つめる。



「嫁に行くのか」



静かに告げられたその言葉は寂しい声だった。

幼馴染が嫁に行くのが寂しいなんて可愛い人だ。
私はつい頬が緩む。


まるで彼が私のことを好きみたいだから。



『行くつもりは無いよ、』

「！そうか！よかった！
俺から宇髄に知らせておこう！」



ぱあっと明るくなるあなた。
わかりやすいなあ、可愛い。

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