あなたが、【煉獄杏寿郎】

あなたと安心 ページ19

「宇髄とは何を話していたんだ」

『特に大したこと話してないよ』


少し怒った様な声だった。
むぅっといってぐりぐりと私の肩に顔を押し付ける。


「秘密の話といっていた！」

『婚約の申し出をお断りしただけ』

「はやいな！」

『長引かせたら悪いし』


よかった！とまた強く抱きしめられる。
そんなに幼なじみが取られるのが嫌か。
可愛い奴め。

そんなことを生意気に思う。


「君は鈍感だな」


ぽつりと彼は言った。
鈍感。
そんなつもりは無いけど、

ぽんぽんとあなたの頭を撫でる。



暫くするとそっと身体を離される。

急だったため、真っ赤な顔を隠すのを忘れてしまった。頬を両手で包まれ、じっと私の顔を見るあなた。


恥ずかしすぎる。


ギラギラした目を真っ直ぐみることが出来ず、目を伏せる。


『ど、どうしたの』

「うむ！確認できた！」


嬉しそうな声がして、ちらっと見ると嬉しそうな笑顔の彼。


『よかったね....?』

「ああ、よかった。俺は間違いなかったみたいだ！」


また彼に抱き寄せられ、次は彼の胸に顔を埋める形になった。

『ひぇえ...』とまた情けない声が出てしまい、彼に笑われる。
笑ってる場合じゃないんだってば。

彼の胸の音が聞こえる。
あれ、少し、早くないか？

彼は体温が高いから早いのか。

そう思いながらちらりとあなたを見る。


『何を確かめたの？』

「大事な事だ」


余裕そうな彼は私の頭を撫でる。
あ、これ気持ちい。

さっき心地いいと彼が言っていたのもうなずける。


なんでこんなことをするのか、結局教えてくれなかった。

考えられるのは二種類。

あなたの好きな人と私を重ねているか。
私を女としてみてくれていないか。

後者の可能性が高い。

モヤモヤと考える。
彼のことが本当に分からない。

ぽんぽんと一定のリズムで優しく撫でられる背中。

心地よすぎて寝不足だった私はうとうとと眠くなる。


「眠いか！」

『ん』

「安心しろ！そばにいる！」


ぎゅうとあなたの匂いに包まれて、目を閉じる。


「おやすみ」


ほわほわした頭に彼の優しい声が聞こえる。

私は安心して意識を手放した。


「Aが気づくまで、ただの幼馴染でいよう。ゆっくり、気がついてくれ」


その言葉は私の耳に届かなかった。


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