"恋の仕業" (ページ8)

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ep.8 ページ8

田中樹side

「次樹くんでーす、お願いしまーす」

「お願いします」

急遽、らんらんが彼女役をする事になり

ついに俺の番。

俺のテーマは

"お風呂上がりで髪を乾かし合うカップル"

メイクさんに髪を濡らされ、

ソファに座るよう指示される

「蘭さんお願いします！」

ｶﾒﾗﾏﾝのアシスタントの子が

らんらんを連れてくる

部屋着のスウェット、

髪の濡れた感じ……

「うわ、可愛い」

思ったことがそのまま口から出て

「樹くん素直だなぁ」
周りにいたスタッフさんが笑い出した。

「樹さん、からかうのやめて下さい」

小走りでこっちへ駆け寄り
カメラマンの指示で、俺の前に座る。

「これっぽっちもからかってない、本心だから」

俺の両脚の間にすっぽり収まる
後ろ姿さえ愛おしくて、

ダメだけど抱きしめたくなる

「…褒められ慣れてないから苦手なんです」

少し迷惑そうにそんな事言いながら振り返る君の
ふわっと香る匂いとその表情にクラっときて

「じゃあ本当は照れてんだ？」

とか言って余裕ぶっこいてるけど、
実際のところ必死こいてんのよ。

「照れて…は無いです。まったく」

そう言い切られ、

いつものやり方で口説いたところで

通用しないし、

気持ちを伝えれば多少なりとも

俺に揺らぐかな、って考えてたけど

彼女の気持ちは変わらない。

撮影中、どうやったら
俺のこと意識してくれるか

ただそれだけを考えて

「いいねぇ、彼女にゾッコンな感じ出てるよ！」

演技とかじゃなく、まさにその通り。

俺だけが夢中になってんの

らんらんがきょもの事を

目で追ってる事なんて前から気付いてたよ

でも俺だって簡単に引けるような男じゃないから、

覚悟しておいてね？