【twst】賽は投げられた (ページ15)

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「寮をぶち壊せるくらいの力ってことはぁ、やっぱりクマノミちゃんって強えんだ？」

「いや…別に強い訳じゃないと思います」

「じゃあ何なの？」

結局誰かヒーローが助けてくれる訳でもなく、モストロラウンジ？というレストランの様な場所に連れて行かれた。お店の割には真っ暗で少し不気味だ。

…いや、何なの？なんて寧ろ俺が聞きたい。そもそもこんな状況に陥ってるのも謎だ。何もかも全部意味がわからない。

ひょんなことからベルゼブブと一体化して半ばチート状態で異世界からオンボロ寮に落ちてきましたってか？笑えない。支離滅裂だ、こんなの。

理不尽すぎるこの状況にも、今までのはちゃめちゃな経緯にも頭を抱えたくなる。

そんな俺を見兼ねてか、もう片方の男がやんわりと言葉を挟んだ。

「…まあまあフロイド。そんな風に質問責めしては転入生さんが困ってしまいますよ」

男はにっこりと人の良さそうな笑みを浮かべてはいるが、言葉に妙な圧を感じる。…案外こいつの方が危険なのかもしれない。

「だってぇ～クマノミちゃんがハッキリ答えねえんだもん。

…なぁ、早く言えよ」

途端に地を這うような声を出され、びくりと身体が微かに揺れた。

まさかこれがフロイドの本性だったりする…？無理、絶対殺される。これは人を殺るのに躊躇ないタイプの奴だ。

…しかしベルゼブブのことを上手く説明できる自信はない。下らない冗談だなんて思われたら殺されてしまうかもしれない。

仮に信じて貰えたとしても無事に返してもらえる確証なんてない。寧ろそのベルゼブブ自体に興味を持たれたら一巻の終わりだ。一生解放してもらえない。

今すぐ逃げ出したい衝動を必死に抑えながら、考えを巡らせ俺は重々しく口を開いた。

「…ほんの少しばかり護身術を嗜んでいたんです。

フロイドさんが先程見た乱闘は…えっと、偶々上手くいった(・・・・・・・・)だけなので…全然強い訳じゃないんです、俺」

ひくつく表情筋を叱咤し、青い顔を悟られない様に無理矢理微笑んでみた。

“意味深そうに微笑んどけば何とかなる”…これは俺がパブリックスクールの監督生会議で学んだことだ。

微笑みを浮かべて「It's interesting.」とか「That is not bad.」なんて言っておけばそれっぽくなるのだ。とりあえず笑っときゃ貫禄付いて見えるものさ…多分。