・些細で小さな約束 ページ7
*
「裕太……?」
「あー、ごめんごめん。今ねぇ、柚子さんと仕事の打ち合わせしてたんだよね。柚子さん、わかるでしょ?」
「うん、けど打ち合わせ……?ふたりで打ち合わせしてるの?」
「そう。柚子さんの知り合いの人が俺の陶芸品を気に入ってくれたらしくてね?今度、女性向けの雑誌で特集組んでもらえることになったんだよねぇ。」
「ファッション誌で特集?えっ、裕太すごいじゃん!」
「んふふ、でしょー?すごいよねぇ。俺もびっくりしちゃったよ。」
弾む声を聞いていると、それがどれだけすごいことかも、裕太がどれほどこの仕事が好きなのかも伝わってくる。
「裕太、頑張ってるんだね……。」
「ふふっ。まあ、でも、それを言ったらAちゃんもでしょう?あっ、ごめん。柚子さんに呼ばれたから、そろそろ戻らないと。もう大丈夫?」
「あ、うん……。仕事中なのにごめんね。ありがとう。」
「いいえー。帰ったらラインするね。」
「うん、待ってる。」
声が聞きたいという理由で電話をしてきた私に裕太は、電話を切った後も小さな幸せの約束をひとつくれた。
声を聞いて、より切なさが増してしまった気がするけど、裕太からのラインを楽しみに残りの時間を過ごして、ひじきと一緒に布団の中でその連絡を待った。
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それなのに裕太から帰ったことを知らせるラインは届かないまま夜が明けていた。
散々待ってた裕太からの連絡は、仕事の休憩中に届いた “ごめんね” の一言のみ。
そんな一言で済まそうとする裕太に、仕事中ずっとモヤモヤしていた。
理由もわからないままなんてやっぱり納得できなくて、仕事が終わって店を出てすぐ、歩きながら裕太へ電話をかけた。
・
「あぁ〜Aちゃん。昨日は連絡出来なくて本当にごめん!」
「私、ずっと待ってたんだよ?裕太がラインくれるって言うから。」
「うん、ごめんね?ちょっと疲れちゃって、気づいたら朝で……。」
気づいたら朝……って。
裕太が連絡くれたのは、お昼じゃん!
起きてすぐには私に連絡くれなかったってこと?
裕太の中で私の優先順位ってどれだけ低いの?
自分の中で色んな感情が浮かぶのに、なにひとつ言葉にしては言えなくて……。
「ねえ、Aちゃん。怒ってる?」
「怒ってるっていうか……。」
怒るとか、そういう次元の話じゃない。
悲しいよ。
私だけが好きみたいで、悲しいよ、裕太。
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作者名:ミツ葉(にかみつば) | 作成日時:2022年5月20日 5時