・涙のワケ…Ki ページ22
*
洗面所で歯を磨いている時、外からガラスの割れるすごい音が聞こえて、咄嗟に音のした玄関に目を向けた。
明らかに隣から聞こえてきたし、なにか物騒なことが起きていたら嫌だなと思ってそっと扉を開けてみたらさ。
「え、Aちゃん?」
玄関前で前でAちゃんが小さく蹲っているから、慌ててサンダルを穿いて駆け寄った。
顔を見るとAちゃんは静かに涙を流してたんだけど、俺の顔を見た途端、声を出して泣き始めちゃって。
その涙は一向に止む気配はなく、背中を摩ってあげることしかできなかった。
きっと隣にいる俺の声も届いてないだろうし、部屋から聞こえているひじきの寂しそうな鳴き声もAちゃんには届いてなかったと思う。
「ここでいくらでも付き合うけど、ひじきが鳴いてるの聞こえる?とりあえず部屋に入ろうぜ。」
そう声をかけると、やっと反応してくれてほっとしたよ。
こんなになるまで泣くなんて、なにがあったんだろう。
もしかして仕事で嫌なことでもあったか?
それともなにか失敗しちゃったとか?
まさか、彼氏と喧嘩でもした?
こんな感情丸出しで泣けるAちゃんは、素直で純粋だからなのか……?
それとも、こんなになるまで我慢し続けてしまったからなのか……。
俺にはわからないけど、今までのAちゃんを見てきて、両方のような気がした。
正直、女の子の涙には慣れてないから、目の前で泣くAちゃんに掛けてあげるべき言葉もわからなくて。
膝の上に乗るひじきにAちゃんがしてあげてるように、俺もただひたすらAちゃんの頭を撫でてあげることしかできなかった。
少し落ち着いてきたところで声を掛けたら、返ってきたAちゃんの声がめちゃくちゃ鼻声だったからつい笑っちゃったら、気にしてそっから喋んなくなっちゃったっけ。
それがあまりにも可愛くて可笑しくて、“抱きしめてやろうか?”って笑いながら言ったら、ブンブン首振られちゃって。
知ってる。
Aちゃんはそういう子じゃないって、わかってたよ。
きっと彼氏がいなくたって、そこで頷くような子じゃない。
だからこんなにも心がグラグラになっちまうんだよな。
帰り際、眠るひじきをひと撫でして、俺が帰った後はおまえがAちゃんを慰めてやれよと心の中で呟いてた。
だけどそんな心配をする必要はなかったんだね。
663人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミツ葉(にかみつば) | 作成日時:2022年5月20日 5時