・鉢合わせ ページ18
*
「じゃあ、また来るね。」
翌朝、玄関を開けて一歩外へ出た裕太が、こんにちはと挨拶をした。
この階には2部屋しかないんだから、裕太が誰に挨拶したかなんて見なくても明白で……。
「あ、どもー。」
急いで靴を穿いて一歩出ると、やっぱり北山さんがいて、白々しく挨拶をしてきた。
「こ、こんにちは……。裕太っ、待って!下まで送るっ。」
「わっ。ふふっ、そんな急いだら転んじゃうよー?」
玄関から見送るだけのつもりだったけれど、北山さんに見られるのを躊躇い、素早く挨拶を済ませた私は、お互いの部屋の真ん中にある階段を駆け降りた。
「気をつけてね。」
「うん、ちゃんと安全運転するよ。」
「時間のある時はできるだけ自炊して、栄養のあるもの摂ってね。」
「ふふふっ、うん。」
「え、なに?なんでそこで笑うの?」
「なんかAちゃんがお母さんみたいだから。」
「ひどいっ。私はただ裕太の心配してるだけなのにっ。」
「ふふふ、ちゃんとわかってるよ。」
ありがとうと言う裕太の唇が、おでこにちゅっと押し当てられる。
「じゃあね、Aちゃん。」
「うん、またね。」
近所にあるパーキングまで歩く裕太に手を振ってから階段を上がった。
.
「みーちゃった。」
階段を上り切ると、再びお隣の扉が開いて、ひょっこり北山さんが顔をだしてきた。
「見ないでくださーい。」
「んふふっ、偶然でわざと見てたわけじゃないんだし、いいじゃん。」
昨日のことがあって、顔を合わすのが恥ずかしい。
本当はちゃんとお礼も言わなきゃなのに……。
「あのっ!」
「んー?」
「あの、昨日はありがとうございました。なんていうか……すごく助けられたというか、慰めてくれてありがとう……。」
どうにかお礼を伝えると、一瞬、間があって。
「ねえ。さっきの、彼氏?」
「そう……。」
「泣いてたのって、彼氏とのこと?」
昨日の今日でなんでそんなこと聞くのよ。
デリカシーなさすぎるから。
「ねえ、あの彼氏とのことで泣いてたんだろ?」
「………言いたくないっ。」
「ふふっ。つーかAちゃんの彼氏、めちゃくちゃカッコいいな。」
「そ、それはどうも。」
カッコいい人にカッコいいと言われて悪い気はしないし、寧ろ、彼氏を褒められて照れてくる。
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作者名:ミツ葉(にかみつば) | 作成日時:2022年5月20日 5時