・疎ましい存在 ページ17
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そこで撮影予定のある作業場を見せたり、作品を見た宝来さんが紙面に載せたい物と、裕太が載せたいと思う物を選んで話し合ったりしていたと言う。
その後も食事をしながら撮影のコンセプトなんかを説明されて、インタビューされる内容もある程度説明され、聞いたりしていたらしい。
「それでね、柚子さんが陶芸に興味を持ったみたいで、以前から教えて欲しいって言われててね。作業場も見せてたからテンション上がっちゃったみたいで、じゃあついでにってことになって……。」
「教えてあげてたんだ。」
「うん、そう。それで終わった後に一緒に食事したんだけど、柚子さんが飲みすぎたらしくて気持ち悪くなっちゃって。」
「そうなんだ……。」
「吐かせたりしたけど辛そうでさ。今タクシー乗ったら絶対出ちゃうって言うから。俺はひとりでソファーで寝たし、Aちゃんが心配するようなことはなにもなかったから。それだけは信じて欲しい。」
裕太の話に嘘はないとわかる。
信じて欲しいと言われて、ちゃんと信じられるの。
それなのに・・・
こんなにも苦しいのは、私が柚子さんの存在を疎ましく思っているからかもしれない。
「Aちゃん、嘘ついてごめんなさい。」
そう言いながら私のことを抱きしめてくる裕太。
「ねぇ。裕太は柚子さんのこと、どう思ってるの?」
裕太を見上げて聞いてみた。
「どう思ってるって、憧れの人かな〜。自分の好きな物や選んだ物に自信を持っていて、自分のお店も持ってて。」
「憧れの人、か……。」
「うん。俺は正直、自分の作品全てには自信が持てなくて、誰かに良いって評価してもらえないと駄作に思えちゃうんだ。だから俺も柚子さんみたいに自信が持てる人になりたいなって思ってて。だから憧れ。」
「そうなんだ。裕太が自分の作る陶芸品をそういう風に思ってたなんて知らなかった。」
「カッコ悪すぎて言えないよ。」
裕太はカッコ悪くなんてないよ。
それに裕太の作る物はどれもあたたかみがあって、心を込めて作ったことが感じられるもん。
「私、裕太が好きなの。だからムカついたりもするし悲しくもなるし、寂しくもなっちゃうの。私こそごめんなさい……。」
裕太の背中に手をまわすと、背の低い私の頭のてっぺんに唇が寄せられた。
その瞬間、涙の雫がぽろり落ちた。
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作者名:ミツ葉(にかみつば) | 作成日時:2022年5月20日 5時