0日目17 ページ18
「どうだ、そっちはなんか収穫あったか?」
「岩泉さん」
「このパソコンはインターネットに繋がってないので外と連絡は取れなさそうです。多分、他にも館内に機器があっても繋がらないかと……」
渡が現実的な予測も交え岩泉に報告すると、彼は眉間に皺を寄せて顔を顰めた。
「マジか……、あっちのテレビも外には発信できねーもんな……」
「あとはもう、窓一つ見当たらないこの建物に出口があることに期待するしかないですね」
その期待が現実のものとなるか否か、この時点の彼には預かり知らぬところであった。
「なんつーか……とんでもねーな」
「それな、やべーな」
「これはすごいなぁ」
順に黒尾、夜久、海とそれぞれ目の前の光景に感想を述べる。彼らが今いる場所は館内図の上ではアクアリウムと示されていた部屋である。まさかと思ってはいたが、いざ部屋に入れば薄暗い部屋にはいくつもの水槽が並び海魚や淡水魚、熱帯魚など様々な魚が泳いでいる。一番奥には高さは天井まで丸々、幅は壁面いっぱいまでのまさに大水槽が設置されており、一等大きなサメやマンタ、アジの群れなど水族館の看板とも言える魚達が悠々と泳いでいる。一部の元気マン達は真っ先にそちらへ向かっていった。
「うわーーー!!!やべぇ!!これやべぇっすよ夜久さん!!」
「んなも見りゃ分かるわ高校生にもなってはしゃぎ倒してんじゃねーよ」
「だって水族館ですよ水族館!!」
「まあ確かに、こんなとこにこんなもんあるなんて思わねえよなぁ、普通」
何も考えないで先駆けた元気マン筆頭の灰羽の言葉を実にどうでも良さそうにあしらう夜久、その二人のやり取りにそばで大水槽を上まで見上げていた黒尾も混ざる。
「これ、やっぱり上に繋がってるよなぁ」
彼は見上げたまま、ぽつりと呟く。いくら上を見ても水面の境界とその向こうの暗闇しか彼の目には映らないが、もしこの施設が普通の水族館と同じ管理の仕方をしているならば、上にはバックヤードがありそこから餌を投げるなり、はたまた掃除のためにダイビングスーツを着た職員が水槽の中に飛び込むなりするはずである。
だが、一階から二階、そして三階に続く三ヶ所にある階段には全て続きがなく、廊下をぐるりと一周してみても当然上へ続く階段は存在しなかった。今の時点でこの快適で気味の悪い檻から出られるのは、目の前で悠々と泳いでいる魚たちだけなのだ。
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星を廻せ - 中の人です。表紙作りました。人選は完全に我の趣味です。本編などには何も関係ない趣味の人選です。 (2023年3月24日 4時) (レス) id: 853819a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星を廻せ | 作成日時:2023年3月19日 7時