0日目10 ページ11
「とりあえずはここの探索か」
一息ついて烏野のまとめ役、澤村は仁王立ちで広いフロアをぐるりと見渡す。烏野高校に言い渡された探索範囲は一階、そして先程まで大勢の人間で会議をしていたこの法廷ももちろんその範囲内である。冊子に描かれた館内図で見たときには階層を大きく占めているわけでもないように見えたが、こうして冊子組含め烏野以外全員移動し本来の全体像が見えると体育館に匹敵するほどの広さがあるように思える。行動力のある部員たちは既に各々気になる箇所を探索し始め、澤村自身も先程から目に入っていた石柱の裏にひっそりと隠れるように佇む扉を調べようとしていた。
「だから顔が人間で体が狼か体が人間で頭が狼だって!」
「それじゃすぐに人狼だってバレんだろーが」
「服着て頭になにかかぶれば分かんねーよ!」
「怪しすぎだボケェ!やっぱり夜になったら月見て狼になんだよ!」
「だからそれ狼男だろ!!人狼じゃねーじゃん!つーか満月の夜しか狼じゃねーじゃん!!」
が、その前にホワイトボードに狼と人間と化け物が入り混じったような謎の絵を描き議論している問題児二人のもとに気迫を背負ってずんずんと歩き出す。
「ふたりとも、探索はどうしたんだ?」
淡々としているようで怒気を含んだその声を聞いた途端言い争っていた二人同時にびくっ、と肩を跳ねさせ、錆びたブリキ人形のようにギギギギギ、と青ざめた顔だけがゆっくり澤村の方を向く。
「キャ、キャプテン!!サーセンっ!!!」
「さーせんっした……」
「全く……、こんなときになにを争ってるんだお前らは」
「こいつが人狼って姿でわかんねーのかって言ってきたんで、人狼は夜になったら変身するから今はわかんねーって教えてたんスよ」
「も、もしかしたらもう狼で服とかで狼の部分を隠してるかもしんねーだろ!!」
「お前らはほんと……」
隣の日向を指さして先程までの会話のきっかけを説明する影山と、自分の説の証明の一助にするために胸元のワイシャツを繰り返し引っ張る日向。そんな前提から何かがおかしい二人を前に澤村は同じ文言で頭を抱えざるを得なかった。
「なにこれお前らが描いたの!?めっちゃ写メりてぇ!!けどスマホがねぇ!!」
「スガも乗っかるな」
更に、画伯のイラストに謎の感銘を受けた同級生が澤村の肩を叩いてハイテンションでホワイトボードを指差すので彼は更に項垂れる他無かった。
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星を廻せ - 中の人です。表紙作りました。人選は完全に我の趣味です。本編などには何も関係ない趣味の人選です。 (2023年3月24日 4時) (レス) id: 853819a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星を廻せ | 作成日時:2023年3月19日 7時