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「……晩ご飯？」
「はい、腹減ってるでしょ。ほんで夜も遅いしもう泊まっていったらええねん」
「え、うん、お腹は空いてる…けど。……え？」
狐さんの持つ器の中身は分からないけれど、漂ってくる出汁の香りと立ち上る湯気にお腹がぐうと小さく鳴ったような気がする。自然と片手が腹部を押さえた、が。今、この狐はなんて言った、泊まるって言った？
「言いましたけど」
「心読むな」
「口に出してましたよ」
「え、嘘。じゃなくて！泊まる？いやいや、だって帰れるし。泊まる必要なんてどこにも」
「帰ってからもどうせ続きやるんやろ。きみ、私の家のほうが集中出来る言うとったし、もう泊まって好きなだけ勉強していき。テスト明日やろ」
そう言った狐さんの言葉は実はその通りで、私は帰ってからもう少し勉強の続きをしようと思っていた。なので、一応狐さんのその申し出はとても有難いものだったのだ。帰ってから誘惑に負けてしまわないとも限らないし、それに出来るならしっかりと集中してさっさと終わらせるほうが効率も良い。
……けれど、いいのだろうか。迷惑とはならないのか。私がそんな考えを浮かべつつ視線を向けると、狐さんはあぁ、と何かに気づいたように声を上げた。
「大丈夫ですよ。私にそんな趣味はありません」
「は？そんな趣味？」
「え、きみに手ぇ出すほど飢えてませんよて。私がきみに手ぇ出さんかが心配なんやろ？」
「……そういう心配じゃない！！！」
何にも気づいてないじゃないか！！！
結局、そういう心配が無いことが(一応)分かったことと、迷惑では無いと言ってもらったことにより私は狐さんの屋敷に泊めてもらうこととなった。
―――……
「きつねうどんだ、共食いだ」
「ちゃいますよ。きつねの好物の油揚げが入っとるからきつねうどんなんですよ」
「馬鹿にしてるな？実際、狐さんて油揚げ好きなの」
「その下にあるうどんの方が好きですね」
遅めの晩ご飯のメニューはきつねうどんだった。かつおと昆布がよく効いている色の薄い出汁で、これは関西風なんだそうだ。拘りがあるんだ、と言えば「だしの素って便利ですよね」と返ってきた。……拘りが強い訳では無さそうだ。
ずず、と麺を啜る音が響く。遅めの時間に食べるこういうものは"夜食"という感じがして背徳的だがとても美味しく感じるもので。出汁まで全て飲み干して、両手を合わせて食後の挨拶とした。
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ゆたんぽ(プロフ) - つい先日この作品を知りました。すごく面白いです！執筆お待ちしております。 (2022年10月16日 18時) (
レス) @page7 id: dbdf82a303 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - 前作から追っていましたが、久々に開いたら更新されててうれしくなりました。展開、言葉選び、どれも大好きです。陰ながら応援しています！ (2021年7月28日 15時) (レス) id: 315a454668 (このIDを非表示/違反報告)
とかげ - めちゃめちゃ好きです！！大好きです！！！こんなにも素敵な作品を生み出してくださってありがとうございます！！！ (2021年7月26日 21時) (レス) id: f7b3ff643c (このIDを非表示/違反報告)
umi(プロフ) - はじめまして。つい先日こちらの小説(第一篇)に出会い、世界観に引き込まれて一気に読んでしまいました。ほのぼの、きゅんきゅんした日常のシーンから、勢いのある戦闘シーンまで、全て読んでいてドキドキしました！これからも陰ながら応援しています！ (2021年2月18日 13時) (レス) id: ec3f8a956b (このIDを非表示/違反報告)
satou(プロフ) - ぴゃああああああ更新されたんですね！楽しみにしてます！！！ (2021年2月2日 11時) (レス) id: 9c6159a9cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朝霧 | 作成日時：2018年8月18日 5時
