[一章]-4 ページ11
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こちらに背を向けて立ち、妖怪達に片手を翳すその姿。更に大きく燃え上がった炎が、たちまち辺りに広がり妖気ともどもを飲み込んでいく。
その光景に目を見開いて、首に巻いた赤い布を揺らすそのひとを見上げた。
「…きつね、さん……?」
「まだ倒れとるんですか。はよ立ってきみも働いてください」
狐さんは私の刀を投げて寄越したが、その頃には辺りには何も無くなっていた。残り火がパチパチと燃えるばかりで、あれだけ校舎を埋め尽くしていた妖怪達は皆消えている。
狐さんは息を吐きながら袖に付いた煤を払っていた。私はよろよろと立ち上がる。
「ふー。久々に運動しました。でっかい妖気が煩くて敵わんから来てみたんやけど」
「……何で、狐さんが此処に……」
「え、言うたやん、安眠妨害やったんですよ。煩いのんしばいたろ思て。……まぁ、きみが此処におるとは思わんかったけど」
「……そう、なんだ」
「さて、帰りますかね」
煤を払い終えた狐さんは、さっさとその場から歩き出した。体育館の入り口まで行き、私の方を向いて無言で立ち止まる。
「……」
「……」
「……?」
……もしかして待ってくれてるのだろうか。
私が困惑して立ち竦んでいると、痺れを切らした狐さんは声を掛けてくる。
「いつまで此処おる気ぃやねん。帰りますよ」
「え、あ……今行く……っ」
慌てて狐さんの方へ一歩踏み出した時、ぐらりと視界が揺れた。地面が近付いてくる。
薄れゆく視界の端に、こちらを見て慌てた様な表情を浮かべた狐さんが見えた気がした。
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朝霧(プロフ) - 丸メガネさん» 語彙力が無くなる程とは……有難いお言葉、本当に嬉しいです!しっかり完結させるつもりですので、これからも気中に読んで頂ければ幸いです。有難うございます! (2018年8月17日 11時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ(プロフ) - え、もう好き。語彙力無くなるくらい好きです。お忙しいとは思いますが、どうか更新停止せず完結まで持っていってください。お気に入りに追加してるので通知いつも楽しみにしてます。頑張ってくださいね! (2018年8月16日 23時) (レス) id: 2b4c29f1fe (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - SAKANAさん» コメント有難うございます、お気に召された様でとても嬉しいです!小説内の進展速度は遅いですが、これからも何卒気長に見守って頂ければと思います……!更新頑張ります! (2018年8月13日 16時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
SAKANA(プロフ) - こういう小説すきです…とても好きです、ありがとうございます…更新頑張ってください陰ながら応援しています… (2018年8月12日 23時) (レス) id: a3a9931e24 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - 咲良さん» 有難うございます、初めてコメントを頂けたので本当に励みになります。これからも何卒宜しくお願いしますね! (2018年8月3日 0時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝霧 | 作成日時:2018年7月24日 4時