▽ 17歳 冬 ページ30
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「ねえ、A」
中村晃、17歳。
『んー?』
松田A、17歳。
「寒くね?」
『うん、でも最近暖かくなってきたよね、』
「……そういうことじゃないんだけど」
『ん?何?』
「いや、なんでもない」
高2の終わり、冬の帰り道。今日は部活もなく明るいうちにゆっくり帰宅。部活がないのも、もうすぐ期末テストだから。
『あ!』
「ん?」
『晃!ちょっと寄り道したい!』
「は?」
電車に乗るため駅に入る前だった。Aが突然俺の手を引っ張って歩行進路を変えたのでちょっとよろけた。
『ふふ、』
「……」
俺の手を引っ張るAが楽しそうで、いつも俺に付き合わせてるしたまにはいいかと素直についていく。
『やった!奇跡!』
「クレープ?」
『うん、このクレープ屋さん滅多に現れないんだよー』
「…へえ、」
『ちょっと買ってくるから待ってて、』
「いいよ、一緒に行く、カバン貸して」
『あ、うん、ありがと』
列に並んで嬉しそうにメニューを見るA。そんな横顔が可愛くてつい見つめてしまうと、Aが気づいて俺を見た。
『あ、晃も食べたい?』
「うん、俺も食べようかな、適当に選んで」
『えー、一緒に決めようよ、』
「いいから、Aが食べたいの2つ選んどいて、」
『違う味?』
「その方が一緒に食べられるだろ、」
『うん!ありがとう!』
無邪気に笑うAの笑顔は昔から変わってなくて安心する。ずっと、俺だけに向けていてくれればそれでいい。
「1350円になります」
「はい」
『え、ちょ、晃、あたし払うよ!』
「いいから、クレープ持って」
「150円のお返しです」
「ども、」
戸惑いながらクレープを持ってちょこちょこ俺についてくるところも昔と変わってない。俺、ちょっと亭主関白っぽいのかな。
『晃っ、悪いよ、』
「いつも俺に付き合ってくれてるお礼、」
『いや、それはあたしが…』
「いいから、素直に受け取って、」
『…晃、ありがとう、』
「いいえ、」
だから、ずっと変わらずそばにいて。
(A、クリーム落としてる)
(制服クリーニング出したばっかりなのに!)
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いちか(プロフ) - りりりさん» ありがとうございます!きゅんきゅんしましたかね?良かったです。結婚式や子どもが生まれた話など書いてほしいとのお話もいただいてますので検討中です◯ありがとうございました! (2019年2月24日 0時) (レス) id: d72f7e0d49 (このIDを非表示/違反報告)
りりり - 更新を楽しみにしていた一読者です。ものすごくキュンキュンしながら読ませていただきました。家族となった2人のお話の続編も楽しみに待っております。 (2019年2月22日 12時) (レス) id: a5ef03bd84 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちか | 作成日時:2018年10月28日 20時