僕を好きだと言う泣き虫 sh7

▽ ページ16

.



「今日は泊まってく？」

『いえ、帰ります』

1「そっか、じゃあ送る」

『大丈夫です、タクシーで帰りますから』

1「ほんならお金、」

『いえ！悪いですから！』

「Aちゃん、それくらいさせて？こうやって、内川頼ってくれて嬉しいんだから、」

『そ、…そうですか？』





素敵なご夫婦。ねえ晃、あたしたちもこんな風になれるかな？





1「Aちゃん、また何かあったらおいで」

『ありがとうございます、』

「じゃあタクシー呼ぶね、」





そう言った奥さんに内川さんはちょっと待って、と声をかけた。やっぱり送るって言い出す？





1「その必要なくなったわ、」

『え？』

1「晃、来てる」

『…は、』





内川さんがあたしに自分の携帯を渡してきた。そこにはLINEが開いてあって、中村晃の文字が。





−迎えにきました。−





ああ、内川さん、あたしの話聞きながら晃にLINE送ってたんですね。あたしが帰らないって言ったらどうしてたんですか？





1「晃も子どもやないし、大丈夫、」

『はい、』

「是非また来てね、」

『ありがとうございます』





素敵なご夫婦だ。あたしも晃とこんな風になりたいと思う。ねえ、結局あたしには晃しか居ないんだよ。





『あ、』





外に出ると、晃が車によしかかって待っていた。なんだよおい、かっこいいじゃねえか。





1「おー晃、」

「内さん…すみません、奥さんも、」

「大丈夫よ、気にしないで」

1「こっち的にはAちゃんが頼ってくれて嬉しかったけどね」

「…そうすか、」

1「ま、喧嘩もほどほどにな、」

『すみません、ご迷惑お掛けしました』

1「いーえ、また来てね」

『はい、またお邪魔します』

「気をつけて、」

『ありがとうございました』

「内さん、また明日、」

1「おう、」





ぱたん、と車のドアを閉めて、内川夫婦に手を振る。本当に素敵な夫婦だな、車が見えなくなるまで見送ってくれていた。





(今度何かお礼しなきゃな、)

→つづく

▽→←情けない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す