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『その次の年、埼玉の営業所に異動になって。
彼は一緒に来てほしそうだったけど、わたしは母子家庭だから、お母さんを置いていきたくなくて断っちゃって。
"来年横浜に戻ってくる予定だから、そのタイミングで結婚して一緒に住もう"って言われてるんだけど…』
謙「うん」
『彼といるときに無理してる自分がいるの。
考え方が違う彼と衝突するのを避けちゃって。
そういうのに、最近なんだか疲れちゃった。』
長尾くんは何も言わずに話を聞いてくれる。
『…あっ、ごめんね！こんなどうでもいい話しちゃって。忘れてね！』
"なんでこんなこと長尾くんに話したんだろう"と焦っていると
謙「…よくない。」
『へっ？』
謙「どうでもよくない。Aさんのことなら、どんな話でも聞きたいで、俺は。」
『長尾くん…』
謙「Aさんは優しい。いつも周りのこと見て気を遣ってて、そういうとこ尊敬してる。」
『そんなこと…』
謙「あるって。でも、自分にもっと優しくしてあげて。
どんな選択をしたってAさんの人生なんやからさ。誰にも責めることはできんよ。
それでも、もし責める奴おったら俺が守るから。」
そう言って、わたしの頭を控えめにぽんぽんっと撫でてくれる。
『ありがとう…』
優しいのは絶対長尾くんのほうだ。
ほしい言葉をくれて、いつもその笑顔でわたしを安心させてしまうのだから。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年11月24日 4時
