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『ん？』
彼のほうに向き直る。
謙「…今日、駅まで一緒に帰りませんか？」
そう言った彼の顔には、いつもの太陽みたいな笑顔はなかった。
なぜだろう。
目が逸らせない。
『はい…』
無意識のうちに返事をしていた。
瞬間、長尾くんの顔がぱあっと明るくなる。
謙「ほんま！？よかったー。あ、じゃあ店の前で終わるの待ってます」
『わかった。すぐ終わらせるね。』
閉店時間になり、長尾くんが店の外へ出ていく。
「また後で」と大人っぽい笑みを残して。
寒空の下、長尾くんを待たせてはいけないと思い、急いで閉店作業をする。
全て終わって外へ出ると、長尾くんが手を振りながら眩しいくらいの笑顔を見せてくれた。
『お待たせ！遅くなってごめんね』
謙「いえいえ。すみません、急に誘ってしもて。あ、えっと…行きましょうか」
『うん』
並んで駅に向かって歩き出す。
いつもはたくさん話すのに、今はふたりの間に会話はない。
ただただ、夜の坂道を下っていく。
そんな時間も良いな。
なんて思っていると、
「………A？」
聞き覚えのある声が聞こえた。
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作者名：雪 | 作成日時：2022年11月24日 4時
