人魚姫2 (ページ36)

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向かい風仰ぐあの鳥の翼が、すぐそばの木々を揺らし、溢れるように舞い上がった白を青く茂った地面に落とした。

『…あ、』

それが、桜の花びらだと気づく。

「どうしたんすか？」

窓の外を見つめる私の顔を、リン君が不思議そうに覗き込んだ。

『サクラが…』

言いかけて、胸がどくりと波打った。

「んあ、そーいやもう4月かぁ」

壁に貼ってるカレンダーに視線を移すと、リン君が何やらぶつぶつと独り言をつぶやいていた。

4月。

もう、そんな季節。

桜が、満開に咲く季節。

あの約束は、まだちゃんと彼の中にあるだろうか。

それとも…

「どーしたんすか？」

いつの間にか俯いていた視線に、リン君の声が聞こえた。

『っえ、あ、なんのこと？』

「なんか、あったんすか？」

『ううん、なにもないよ(笑)』

リン君は、些細な変化に敏感な人だと思う。

他人のことを気にかけることができる、とても良くできた男の子。

「あ！デート上手くいかなかったんだぁー！」

『うるさーぁい！仕事しなさいよ、』

「図星だ！しょうがない、オレが慰めてあげますよ」

『いいです、結構です(笑)』

結局、リン君に助けられてしまう。

沈んでいた気持ちが、ゆっくりと私の顔に笑みを降らす。