人魚姫2 (ページ34)

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玄関の扉を開けると、まだリビングに誰かいるのか、そこから少しだけ光が漏れていた。

「ただいま、」

そう言ってリビングに入ると、チャニョルとジョンデがテレビゲームに熱中している真っ最中だった。

「早く寝なよ、明日寝坊するよ」

2人の背中にそう投げかけると、間の抜けた「は～ぁい」って声が返ってくる。

「みんなは、もう寝た？」

「あーうん、あ、ちょ、チャニョラー！今のズルだよ！！！」

「勝ったー！！ズルでも勝てばいんだよ～」

ジョンデがゲームに負けたらしい、「もう一回！！」とギャーギャー騒いでる。

「もう夜中なんだから、静かにしなよ」

呆れて声をかけると、振り返ったチャニョルが俺に言う。

「なぁ、ベッキョニどこにいるか知ってる？」

「え、？」

どうしてか分かんないけど、その言葉に息が詰まった。

「あいつ、まだ帰ってきてないんだよ」

「…そうなんだ、」

他人事みたいな俺の言葉に、眉をひそめるチャニョルと目が合った。

「仕事じゃない？たぶん、」

何を取り繕おうとしているのか、とっさのことで慌てた俺の言葉だけが、3人に流れる空気の中であからさまに浮いていた。

「…そっか、連絡きたら教えて」

チャニョルはそう言うと、またテレビの方に顔を向けてゲームの続きを始めた。

「ズルなしだからね、わかってる？」

「じゃあ勝ったら飯おごりな」

部屋に向かう俺の背中には、楽しそうな2人のでかい会話が響いていて。

それから数十分もした後に、今度はチャニョルが負けたのか、ジョンデの嬉しそうな声がリビングの方から聞こえてきた。

明日はレコーディングがあるから早く寝ろとヒョン達から言われてるだろうに、と思っていたが、少しすれば誰の声も聞こえなくなって、ついに2人も寝たのだと思った。

ベッキョナ、まだ帰ってないのか。

ふとその事を考えて、やっぱりやめる。

無駄に、知りたくないことを想像しそうだった。