青春ブタ野郎は求愛性少女の夢を見ない (ページ2)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:48 hit

一章　友達① ページ2

よく晴れた朝。朝日差し込むマンションの一室で、愛夏羽は目を覚ました。

「……もう朝？あー、準備しなきゃ」

愛夏羽はうざったそうにベッドから降りた。手早く身支度と朝食を済ませ、再び寝室に戻る。
現在、早朝六時半。まだ大学に行くには時間に余裕があることを確認し、昨夜充電しておいたタブレットを手に取る。
タッチペンを持ち、描画アプリを開く。昨日保存した描きかけの絵の続きを描いていく。七時前には絵も完成し、今度は編集アプリを開いた。

「…ここは主張控えめで…ラスサビはいちばん盛り上がるから強めに……」

編集を終え、動画投稿サイトを開く。それに、先ほど編集を終えたばかりの動画を投稿する。即座にいいねとコメントがついた。書き込みは一件だが、それは愛夏羽にとってうれしい内容のものだった。

〔日澄さん相変わらず声すごく綺麗！サムネとPVの絵も前より透明感増してる！〕

このコメント主は、日澄もとい愛夏羽が投稿を始めてからずっとコメントしてくれる人物だった。愛夏羽はそれに嬉々として返信した。

〔そう言ってもらえて嬉しいです！絵は今回めっちゃこだわって描きました！レイヤー100超えちゃった〕

〔え、ホントですか！？うわー、このまま他の曲カバーしてったら、絶対売れますよ！CD、期待してます！〕

そのコメントを見て、愛夏羽は急激に萎えた。コメントを返す気にもならず、タブレットをベッドに放り、そばに置いていたカバンの中からスマホを取り出す。
開いたのは、タブレットで開いていたものと同じ動画投稿サイト。検索欄で〔日濁〕と打ち、出た結果の一番上にあった楽曲をタップする。
コメント欄を見る。先ほどタブレットでコメントを見かけた人物のコメントはなかったし、なにも書き込まれていなかった。

「どうせ知らないのに、なんで確認してんだろ」

アプリを閉じ、今度は呟き系SNSを開いた。そして日頃の恨み辛みを、いわば裏垢に、書きなぐった。

ーーー
紫波愛夏羽

動画投稿サイトに、日澄名義でカバー曲を投稿中？裏アカで何やら罵詈雑言を書き込んでいる様子