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短く己を呼ぶ声に、無意識に足を止めた。

左手から聞こえる忌々しいその声が、まるで言外にこちらへ「止まれ」と言っているようだった。




「小僧をよく見てろ」




それだけ言って消えてしまった件に、慌てて周囲を見回す。


ってか小僧ってどの小僧だ。こいつからしたら全員小僧だろ。


脳内でそんな皮肉を叩きながらも、状況が状況故に自然と目線は“彼”を探していて。




『__』




エースさんの姿は不思議なほど良く見えた。

__自然と足を踏み出す。

誰もが武力を交え合うこの場所で、止まっている人なんて他にはいなかったから。

__早くしないとと、気持ちが焦る。

怒りをその瞳に宿した彼は、赤犬と向き合っていた。

__甘い匂いが、鼻腔を満たす。

馬鹿にするなと吼えたその先で、一人海へと向かって行くルフィの姿があった。

__ぶち、と呪力で無理やり動かした筋肉が切れる音がした。

《火》であるエースさんが《マグマ》の赤犬に焼かれ、ルフィが振り返る。

__怒りとも違う感情が、脳を支配する。

とうに限界を超えているルフィの体は、既に動いていることが奇跡だった。

__ただ真っ直ぐに、痛みすら振り切ってルフィの元へと向かった。

膝を着いてしまった彼を、狂犬は見逃さない。




「貴様ら兄弟(・・)だけは絶対に逃がさん!!」




拳をマグマに変えた赤犬が、既に動けなくなっているルフィへと殴り掛かる。

灼熱のそれが当たれば、確実に熱に抉られて死ぬ。

弟の名前を叫んだエースさんが、彼の前に飛び出した。




__これだ。




名を付けれないほどの激情に支配されていた脳は、なにかに納得すると同時にいやに冷静になった。






この瞬間が、本来エースさんさんが死ぬ瞬間だったのだ。

__条件が揃わない今、何をするべきなのか、その答えに辿り着いた。






犠牲は厭わない。ましてや自分など、比べる価値もない。








__切り捨てるようなこの思考は、普段の自分じゃ有り得なかった。

今まで私は散々生に縋り付いてきたのだから。

だから、この時の私は異常だったのだと思う。



ただ、この瞬間、私はその場の誰よりも冷静だった。

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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時

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