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ページ28



『__ふ』




息を吸い込み、脳に酸素を巡らせる。


私が辿り着くよりも赤犬がエースさんの胴体を貫く方が早い。




ならば、一瞬でも攻撃を遅らせればいい。
一瞬でも、彼の死を遅らせればいい。




それを繋げれば、繰り返せば、いつか辿り着けるから。



左手に握った薙刀に呪力を込める。
あの時とは比較にならないほど膨大な呪力を、滝のように落とし込む。
勿論、器はそれに耐えきれずに音を立てて砕け散った。

それでいい。これでいい。

気を引くのが目的だから。
ガラスを叩きつけたような音に、少しだけ赤犬の意識が逸らされた。


__赤い花弁が、一枚。


呪力は、血液だ。
それぞれ術師の個性がそこには宿っていて、同じ呪力は二つと無い。

呪力もどきのなにかがチラつくこの空間でも、自分の呪力を見つけるのは容易い。
薙刀に付いていた刃__割れて破片となったそこには、まだ私の呪力が残っている。
それに集中した。

糸でもついているかのごとくそれらに意識を巡らせて、手繰り寄せる。
私の意志のままに動く破片は、真っ直ぐ赤犬へと向けられる。

血を欲した彼らが、赤い血飛沫()を咲かせた。


__花弁が、二枚。


血を流した赤犬の目線がこちらを振り向く。

けれど距離がある私よりも、取り除くべき危険因子を彼は優先した。



それは、間違いだった。



拳が振り抜かれる。



マグマが、火を焼き尽くさんとする。




『___ぅ』




吸った息を吐くと同時に、刃先を無くした薙刀を手から離した。


それが地面に落ちる前に最後の一歩を踏み出す。

トップスピード、それじゃダメ。

それ以上を出すために筋肉、筋、繊維、血管の一本一本まで、確実に呪力を流す。


百パーセント以上の力を出せば、人間の体は壊れてしまう。
本能的に、人間はそれを防いでいる。
けれど呪力で固めれば固めるほど、出せる限界点は上がってくる。



一切目をそらすこと無く刹那の間に赤犬の間合いへ滑り込む。

握りしめた拳には、同じく隅々まで巡らされた呪力。


周りの音が、遠くなる。



コンマ一秒。




それが勝負だった。




『__ッ』




自分の犠牲を厭わないこの行動の原因も、今なら分かる。

あの時の私は、《助けたい》なんて気持ちは無かった。

ただ、そうしないと自分が死ぬ(・・・・・)と、漠然とそう思ったのだ。



私は、冷めている。



それは、私にとっての義務だったのだ。






__黒い火花が、散った。

無理をしてでも→←#



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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時

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