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エースさんを認識した瞬間、耳元で聞こえた低い声。
ヒヤリとした感触が肌にあたり、先程の緊迫した光景が思い出される。
『ックロコダイルさ__』
「黙ってろ。
舌ァ噛むぞ」
腰に回された太い腕が私の体をがっしりと掴み、そのまま彼の体がサラサラと砂になっていく。
巻き起こされた砂嵐に固く目を瞑ると、いつの間にか肌を打ち付ける風は止んでいた。
目を開ければ、鯨の形を模した船体の上に下ろされた体。
損傷した箇所はどこもなく、五体満足で帰ってこれたのだと認識すると、ハッと我に返って頭上を見上げた。
「…あ?」
不機嫌そうに葉巻から紫煙を昇らせるクロコダイルさんが真後ろに見えて、私を抱えて着地してくれたのだと理解した。
反射的に礼を言いそうになったが、よくよく考えれば先程彼に殺されかけているのだ。
ぐっと唇を噛み、出かけた言葉を飲み込む。
「…なんつー顔してんだ」
『…お礼なら言いませんから』
「んな金になりもしねぇもんいらねぇさ。
…ただ、これで借りはなしだ」
私の顔より少し下にずらされた視線。
黒の瞳に僅かに奔った赤は、すぐに興味なさげに消えてしまう。
そんなことを気にする人だったのかと疑問に思えば、海から引き上げられたイワンコフさんと目が合った。
バチンと向けられた強烈なウインクに察しがついて、この人も大概世話焼きだと肩を竦める。
うなじを撫でた風に背後を振り返れば既にクロコダイルさんの姿はなく、砂が風に乗ってある一点へと向かっているのに気付いた。
どうやら彼も彼で自分の目的を果たすために既に動き出しているらしい。
どこからか聞こえてきたルフィの雄叫びに苦笑を漏らして、私も未だ手に馴染まない得物を握り直した。
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なぎしば(プロフ) - 改革さん» ご指摘ありがとうございます。確認したところ訂正すべき箇所が分からなかったのですが、具体的にどのセリフか教えて頂けますでしょうか? (4月20日 0時) (レス) id: 520c46c8a4 (このIDを非表示/違反報告)
改革 - 三話の一方通行って話の中のセリフがおかしかったです。 (4月18日 9時) (レス) id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 作者さんの素晴らしい語彙力で、戦闘シーンの緊張感などリアリティ満載の作品が楽しめました!とっても面白いです、ありがとうございました。 (2月25日 10時) (レス) @page33 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしば(プロフ) - わたあめさん» 感想を頂けてとても嬉しいです!更新頑張りますので、これからも飽きずにお付き合い頂けたら幸いです! (5月14日 16時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 凄く面白かったです!テスト前なのに一気見しちゃいました笑更新頑張ってください!! (5月11日 0時) (レス) id: ddaf0618b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2023年2月7日 17時