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『私が知ってる、西暦じゃない』
私が生きていた二十一世紀には一切被っておらず、最早全く身に覚えのない数字がそこには記されていた。
なにかの術式でそもそも違う年に移ってしまった?
けれど大航海時代だった昔はこれほど印刷技術は進歩していないはず。
写真の技術だって二十世紀頃から見られたものだ。
ますます深まる疑問に既に脳はフル稼働しすぎていてパンク寸前。
他に漂着しているものもよく見てみれば海水で錆びた剣や折れた刀、はたまたあの遠くに見えるのは、人骨ではないだろうか。
今どきこんな物騒なところが日本にあるものなのか。
その時、パキ、という音が聞こえ背後を振り向けば、大きな、獣。
「…グルル」
『…これが、虎?』
桃色の毛色の、虎のような見た目の生物。
特徴的なあの模様はそのままに、ただ体だけが尋常ではなくでかい。恐らく象と並べていい勝負ではないだろうか。
そんな、現実離れした獣がこちらを捉え、涎を滴らせる。
『私を食べるつもりか…?』
小さく貧弱な見た目の人間など、彼らにとっては格好の餌食でしかない。
虎は足場を整えるために砂を一度踏みしめた後、鞭のような尾を揺らしこちらに飛びかかるために姿勢を低くした。私もそっちがその気なら、と拳に呪力を纏わせ腰を据える。
「__ガルル!!」
『__シッ!』
短い呼気と共に、飛びかかってきた虎の頬を思い切り殴った。
バキィ、と骨が何本か折れた音をさせその巨体が森林の中へ吹っ飛ばされると、折れた木々が土煙を舞い上がらせそれに驚いた鳥が一斉に飛び立った。
硬い感触を受けた拳がヒリヒリと痛み、呪力をぶつけるだけで良かったかと手のひらをブラつかせる。
不運な虎の犠牲により、体が問題なく動くことは確認できた。呪力も回復している。
私は一度頷くと、次の行動を決めた。
『とりあえず町に行こう』
分からないまま悩んでいても仕方がない。取り敢えず人に聞け。
こんな危険すぎる森があるところに人が住んでいるかなど検討もつかないが、探さないよりはマシだ。
こんなところで道草を食って夜になるのを待つ訳にも行かない。それに、早くみんなのところに行って無事を確認しないといけないのだ。
私は制服についた砂を払い落として、すっかり鎮まった森の中へと足を踏み入れた。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時