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『…あれ』
「?どうかしたか?」
『これって』
「嗚呼、その服は最近看守達から奪ってきた服だな。
材質も良かったから保管していたんだが…もしかして、きみのだったか?」
手に取ったのは、見慣れた自分の制服。
黒地の分厚い素材に、内ポケットに入れられた学生証。
そして何より、うずまきのボタンがその証だった。
流石に手袋までは無かったが、手の甲が隠せないのは今更か。
『…これ着てってもいいですか?』
「構わない。
本来きみの持ち物なのだろう?それなら持ち主の元へ帰って然るべきだ」
礼を告げて着替えに向かうと、イナズマさんに着ておけと厚手のコートも貰う。
肌触りの良いそれによくこんなもの見つけたなといっそ感心した。
着慣れた制服に袖を通して戻ると、既に大半の人達は外に向かったようだ。
イナズマさんもイワンコフさんについて先に行ったらしく、ここに残るという元囚人の一人が出口まで案内してくれた。
そこから極寒の森の中を駆け抜けレベル4へ向かう階段を探しに走るが、ルフィさんたちが倒しながら行ってくれたお陰で邪魔が少なくて良い。
少ししたら石製の無骨な階段をみつけ、そこへ向かって更に足を早めた。
「__おい、依り代」
『!…急に話しかけないで』
「それは無理な話。
誰も居ない瞬間を見計らっただけ感謝するんじゃな」
左手に現れた禍々しい歯を生やした口に、舌打ちを漏らしそうになる。
しかし件の気遣いは最もなもので、それ以上文句を垂れることはしない代わりに用事を急かす。
「
『?』
「直に殺し合いが始まる。
余がいる限り負けることはないが…その後も、地獄じゃな」
件の言葉に息を呑んだ。
あの場所に集まるのは屈指の実力者達だ、その殺し合いに巻き込まれていたらと思うとゾッとする。
死にはしないかもしれないが、五体満足で帰れることはないだろう。
命拾いをしたと、自然と逸る鼓動を落ち着かせるために一度大きく息を吸い込んだ。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時