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短い問いは騒がしいフロアでは私たちだけに届いて消えた。
素性が知り得ないやつがこれ以上増えるのは危険だと男性が声を荒らげるが、ルフィさんはこちらを一瞥するとくっと顎を引いた。
「お前、強いだろ」
その言葉に、分かりやすく動揺してしまう。
強い、その言葉__今まで当たり前だったその評価に、渋谷事変の一件で自信を無くしていていたからだ。
私が思わず口を閉ざすと、ジンベエさんは声の調子を落として言った。
「…Aさん、あんたは今ここで脱獄する必要なんかない。
安全を取るなら、今は身を潜めておくべきじゃ」
ジンベエさんの言葉に、今度は顔を俯かせた。
《お前が何を考えてるのかはわかるぜ、俺の自惚れじゃなきゃな。
…でも、いいんだ。
俺は俺の運命を受け入れる。
それにAは、あの時聞こえちまったけどよ、ジジイに逃がして貰えるんだろ?
馬鹿な俺でも、下手なことしねぇでそれを待ってた方がいいってのは分かるさ》
私の質問に、安心させるように笑いながら言ったエースさんの笑顔を思い出す。
そうだ、確かに彼の言い分が正しい。
いつだって自分の死を見据えている人達は、俯瞰的に物事を観れるから。
誤魔化して見ないフリをしていた現実を、私に突きつけてくる。
でもそれは、諦めだから。
別に根性論が好きな訳じゃない、むしろ嫌いだ。
でも
…七海さんの死から、学んだこと。
『行きます。行かせてください。
絶対に、足は引っ張りません』
拳を握りしめ、まっすぐルフィさんの目を見つめ返し懇願する。
長い長い一秒が経ったあと、彼は短い返事と共に私の参戦を承諾した。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時