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「__」
『代々、うちには継承していく能力があるんです。
私はたまたまソレとの相性が
手袋を外して露になった左手にある紋様に、エースさんの視線が向けられた。
『元々月待はある界隈では危険視されてたので、上の人間たちはこれみよがしにと私を殺そうとしました。
能力を継承した人間が当主の座につくというしきたりがあったから、私を殺せば月待も崩壊すると思って』
齢たったの十の、幼子が背負わされたものは重すぎた。
右も左も分からない、産まれた時から植え付けられた素養を仮面に、けれどもまだずっと幼かった私は、結局は押し潰されて、息が出来なくなった。
『__でも、ある人が助けてくれたから。
私は今、生きていられます。
…人生、どうなるかわからないですよ、例えそれが、人生のどん底にいたとしても』
あの時の光を私は忘れない。
自然と浮かんだ微笑に、エースさんが息を呑むのが分かった。
彼の背に刻まれたジョリー・ロジャーと、私の五条先生への信頼は似ているのかもしれない。
その正体がナニカは分からない。
信仰か、尊敬か、思慕か、はたまた畏怖か__しかしそのどれもが紙一重。
でも、そのナニカに自分を変えてもらったという事実は確かなのだ。
『エースさん』
声をかければん?と振り返った彼に、口を噤んだ。
浮かんだ質問を言い淀んで、口の中でだけ反芻して、また口を閉ざす。
答えは、分かりきっている質問だ。
第一、もし仮に彼がそれを望んだところで、私が数え切れないほどの代償を払ってまで彼を助けてやる筋合いはない。
『…いえ、やっぱりなんでもないです』
生きたいですか?
その問いは、誰の耳にも届くことなく宙に解けて消えた。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時