年不相応 ページ19
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陽の光が指すこともない海中の地下深くにある牢獄では、体内時計が狂っても不思議ではない。
今が朝か夜かも分からない状況で幾度目かも知れぬ起床を迎えた私は、己の血で壁に書いた配膳が運ばれてきた数を数えた。
凡そひと月はこの空間に篭っていただろう。
情報を得るためと囚人達と交わす言葉数も少なくなってきた。
そして今、何よりも私の気を引くのは目の前の牢獄に閉じ込められている何者かだった。
他の囚人達のようにべらべらと己の情報を喋ることはせず、沈黙を貫き通す男__恐らく彼は、重要な情報を握っている。
死刑囚か終身刑の囚人たちが放り込まれるここに、彼らの未来はない。故に
しかし、彼はどうだ。
虎視眈々と地上に出る隙を窺っているかのように私が吐かせた囚人の情報に耳を傾け、周囲の様子を見守っている。
他の囚人達とは違う__何を考えているかが分からない気味の悪さは、いっそ興味を引いた。
しかし、どれだけ過ごしてもその男の関心を引けていないのが現状で。
言ってしまえば、脱獄は不可能ではないだろう。
他の実力者たちとは異なり海楼石によって力が奪われることもなければ、武器なしでも戦える術は持っている。
特級がこの世界でどこまでの実力者を指すかは分からないが、弱者に当たることは無いはずだ。
最悪考えることを放棄してしまえば、呪力をぶっぱなして天井に穴を開けてゴリ押しでなんとかなる。
あとは機会を窺いチャンスを広げることが鍵。ただひとつの懸念事項としては、悪辣な環境のせいでベストコンディションではないと言うことだけ。
確率で言えば、失敗する確率の方が高いかもしれない。
けれど高専のみんなの元に戻るためだけに、一割でも残っている僅かな可能性を逃すまいと看守に反抗もせずにいたが、少しずつこの無限地獄にも飽きてきたところ。
__が、しかしその退屈はガラリと覆された。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時