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グラグラと脳を揺らすほどの声に目を瞬かせた。
そこで漸く、自分がしでかした事態の重さを知る。

なるほど、天竜人とは想像以上に身分が高いらしい。
略奪を主な目的とする海賊がごった返す無法地帯の世界なのだ、私達の一般常識から外れた身分がいてもおかしくはない。


しかし私の罪目は思った以上に彼らの気を引いたようで、囚人達の野太くひしゃがれた問いがいくつも投げかけられた。




「でもよ、“地獄のぬるま湯”が関門としてあったはずだ。ありゃあどうしたんだ?」




鷲鼻が特徴的な初老の男が言った。

あれか、あの地獄絵図に出てきそうな拷問に等しい釜茹で。ただの囚人を苦しめるためだけにあるあれ。


勿論最初に見た時は驚いた。
普通死ぬだろ、とか思ったが、残念ながら私には頼もし過ぎるほどの体の同居人がいるのだ。

釜の中はもちろん熱かったが、渋谷事変の痛みに比べたらまだ耐えられる。
火傷で爛れた肌は件が反転術式ですぐに治してくれたため、私の体にこれ以上の傷がつくことはなかった。




『貴方たちと同じように通ってきました』

「ハッハッハ、どうやらこの嬢ちゃんも相当のバケモノらしい!
酒でもあったら、この無限地獄の新しい仲間入りを祝して杯でもあげたかったところだ!!」



バケモノ、その表現に確かにと頷く。

私と違いズルをしていない彼らこそ本物のバケモノなのかもしれないが、件を飼い慣らしている私も相当だ。
顕になった件の紋様を指で潰し、膝を抱え込んだ。




「おい、新入り。
俺たちは暇なんだ。テメェの話を聞かせろ」

『勿論。でも、貴方達の話も聞かせてくださいね』




切れ長の目を細め悪役の如き笑みを浮かべれば、満足気な返事が返ってくる。



この世界に落とされて早々、監獄生活とは随分と滑稽な笑い話。

自分が嫌ってきた粗暴な男達に囲まれ生きていくのは、仲間を助けられなかった罰か。
それならば甘んじて受け入れよう。


けれど、それだけじゃない。



裁きを黙って受け入れるバケモノがいるか?

__否、笑止。



特級だって死ぬ。


ただ、小賢しく、しぶとく、心臓を捨てても生き延びた。




地獄?上等だ。




特級(バケモノ)特級(バケモノ)らしく、この状況をも楽しんでやろうでは無いか。

年不相応→←#



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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時

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