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「わちしに逆らってくる無礼者がいるえ!とっとと捕まえに来るんだえー!!」
電話なのか?あれは。
がちゃんと黒電話を連想させる古めかしい機械音と切られた通話。思わず首を傾げると、憤怒に顔を真っ赤にした天竜人が私を指さして吠える。
「今からお前を捕まえに海軍大将が軍艦を引き連れてやってくるえ!!
もうわちしのドレイにだっていらん、《インペルダウン》で地獄を見るんだえ!!」
『どこなんだ、そこは』
地獄を見るようにと言われても、そもそもインペルダウンとやらを存じ得ない。
ただ状況のヤバさだけは周囲の顔を見て分かった。
これは、逃げるのが得策か。
『__分かった。
私は大人しくここで待つ。だから、市民にはもう手を出すな』
「なんでお前の言うことなんかを聞かなきゃならないのかえ!」
『一々説明しなきゃ分からない?
私は、比べるまでもない手前の命と何十人もの命を比べてあげてるの。
…選択は、誤るなよ』
既に捕まるだけの罪は重ねている。ならば、何を恐れることがあろうか。
この場にいる彼らを見捨てて逃亡することも考えた。
しかし狭いこの島内では隠れようにもいつ見つかるか分からない。
加えて島外へ脱出するための手段もないのだ。
完全に積みである。
ならば、私が今できる最善策は、何をしでかすか予測のつかない天竜人からここにいる人々の命を守ることだけだろう。
巻いていた襤褸を剥ぎ取って投げ捨て、 天竜人の前に腰をおろした。
自分はここから逃げも隠れもしないとでも言うように__お前の蛮行を見逃すつもりもないとでも、言うかのように。
私のそれを合図に人々が折っていた膝を立てたことで街人の顔が次々と顕になる。
中には、《MARIN》と書かれた帽子を被った海兵も何人かいて、私を捕らえるために近付いてきた。
その中に見知った顔がひとつ。
あの、お節介焼きな海兵だ。
私がただ黙って黙礼すると、彼は悔しそうに唇を噛み締める。
赤くなって、血の伝った彼の唇を見て、私は顔を伏せて笑った。
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改革 - 面白かったです。イラストも綺麗で感動しました (4月18日 9時) (レス) @page50 id: bf669bb16c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぎしば | 作成日時:2022年12月26日 21時