:Three Years Ago: ページ31
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夜空が十三の時。
左手に怪我を負ってから、数ヶ月が過ぎたある日。
雪の降り出しそうなほど、寒い日のことだった。
いつも通り仕事をこなして帰る。
そして、帰って弟達と暖を取ろうと、なんでもないことを考えていただけだった。
____ただ、幸せに生きようとしていただけで、彼等との関係は崩れた。
『…』
目の前に転がる、赤い何か。
飛び散った内臓に、転がる肉片。
夜空の視界を埋め尽くす赤に、夜空はただ___何も思わなかった。
嗚呼、死んでいるんだ、と。
顔の判別出来なくなった死体。
人間であった物を、ただの肉塊に変えた人物達が走って逃げるところを見た。
それだけで、この世界の全てが分かるような気がして。
「____あ、姉貴?」
背後からかかった、まだ高い、変声期前の男児の声。
すぐにわかった。
この声は、最愛の弟のものだと。
それと同時に、この状況は彼等には見せられない。
夜空が彼の__一郎の目を塞ごうとした時。
「そ、それ…え?
姉ちゃんが…やった、の?」
『二郎…!』
学校帰り、二郎が赤に埋め尽くされる凄惨な光景を目にする。
夜空はそれに焦った。
この光景は、非常に不味い。
すぐに一郎と二郎の腕を掴んで、その場から動く。
『良い?
一郎、二郎。
あれは忘れて』
「…アレは、何?」
『…』
二郎の言葉に夜空は黙る。
死体だよ、という訳にもいかず、夜空は返答に悩んだ。
それと同時に、恐らくアレはプロがやったもの。
犯人を目にした夜空は狙われるかもしれない。
彼等を守る為のこの状況の最適解に、夜空は唇を噛んだ。
「姉貴?」「姉ちゃん?」
『…ごめんね』
その一言で十分だった。
それだけで、一郎は気付く。
____アレは、夜空がやったものだと。
それに気付いた途端、一郎は二郎の手を取って走り出した。
恐らく、これであの子達が狙われることはなくなる。
直ぐにこの場から離れれば、狙われるのはきっと夜空だけになるはずだ。
夜空は安堵したように息を吐く。
____例え、彼等の中で夜空が人殺しになっても、彼等の安全は守られるのだから。
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます! (2020年5月23日 21時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね!私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい! (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年5月23日 16時