自覚してはならない気持ち ページ21
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「魂の、売り切り…」
『そう。
目的の為に、自分の魂を売ったら二度と元の自分には戻れない。
…何処かで一線を引いておかないと、私が私で無くなっちゃうような気がする』
夜空は、自らの手で他人の命を終わらせられる程、偉くなった覚えはない。
薬も人道を外れたものであり、夜空はそれと距離を置いた。
「…確かに、その気持ちはわかるが」
『だから、自分のやりたいようにやって、後は野となれ山となれって思ってる』
自分を貫き通す、と言うことはそれと同等の危険が伴うもの。
左馬刻は夜空の言葉を何度も脳内で反芻し、頷いた。
そして、彼女の瞳を再度捉える。
揺るがない意志で輝いた瞳は美しく、初めて彼女を見た時のような感動に、気付いた。
夜空は、他の人間とは異なっている。
その異常な盗みへの執着。
弟達への強い愛情。
＿＿そして、自分の意思を貫き通す芯の強さ。
「…綺麗だな」
『？』
首をかしげる夜空。
左馬刻は彼女の外面にも、内面にもその言葉は合っていると思う。
最初の頃、夜空へ抱いて居たあの不信感は無くなって居た。
代わりに感じるようになった、この熱い気持ちは＿＿＿＿
『…ねぇ、お昼食べに行こう。
お腹減った』
「おう」
前触れのない彼女の行動。
それすらも、そういう風に感じてしまう。
＿＿＿＿この感情は、自覚してしまっては駄目なのだ。
それと同時に、口に出すのも。
＿＿＿＿だって、もしその気持ちを伝えて仕舞えば、彼女無しでは駄目になってしまうから。
＊−−−＊
痛みの引いた背中の代わりに痛み出した、左胸にある己の心臓。
ドクドクと、早く脈打つそれは何を示すのか。
『シロ君』
「あ？」
振り向いた彼の宝石のような瞳に、絡めるように捉えられる。
「何でもない」と言って半歩後ろをついて歩いた。
お互いに本名を知らない関係。
名前を知らない友達なんて、聞いたことがない。
だからきっと、名前を知らない限りは互いにただの《知り合い》であり続けられる。
けれど、知り合いにしては物理的にも心理的にも近すぎるその距離。
『＿＿』
風に靡く、細い銀糸のような髪。
それを見る度に、高鳴る鼓動。
その生物的な反応が、どんな感情を表しているのか。
＿＿＿＿この感情は、自覚してはならない。
それと同時に、口に出すのも。
＿＿＿＿だって、もしその気持ちを伝えて仕舞えば、彼無しでは駄目になってしまうから。
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね！私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい！ (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Cynic** | 作成日時：2020年5月23日 16時
