昼時の乱闘 ページ18
．
『…黙って横浜行った方がまだ楽しかったかも』
今更ながら後悔し、帰ろうかな、と読んでいた本を閉じる。
いつの間にか時間が経っていたのか、チャイムが鳴った後屋上に何人かが入ってきた。
それを見て、夜空は鞄を掴む。
入ってきたのが他学年だったお陰で、まだ気付かれていない。
帰ったら何をしようか、と呑気に考えながら学校を後にした。
＊−−−＊
「よぉ、お前が夜空だよなぁ？」
池袋の人通りのない路地裏。
夏服に変わった黒の半袖のセーラーを揺らし、夜空は呼び止められゆっくりと振り返る。
背後にいたのは、金属バッドなどの適当なガラクタを持った七名程の男性。
夜空は黙って頷き、首を傾げた。
『何か用ですか？』
「ああ？
これがようだとは思わねぇのかよ」
コンコン、とバットで地面を叩く、鼻に絆創膏を貼った一人の男性。
怪我でもしたのかな、と思いながら夜空は答えた。
『…野球のお誘い？』
「ちげぇよ！
…お前、この前 新宿の薬屋の仕事断ったろ」
『……嗚呼、断りましたね。
その件に関してはお話はつけたはずですが』
数秒考えて思い出した夜空は相変わらず首を傾げたまま応答する。
確かあの時の依頼内容は、原宿の薬のバイヤーを殺してくれ、というもの。
内容は聞いてしまったが、他言はしないと言って話は終わらせたはずだった。
「殺しの話を聞かれてそのまま放って置くわけねぇだろ？
…と言うわけで、俺らがお前を処分しに来たわけだ」
ニヤリと吊り上がった男の口角。
それに夜空は一歩身を引き、打開策を思案する。
だが抜け出す道が無いと分かってから、一つため息を吐いて膝を折った。
「餓鬼がこの業界に入ったのが間違いだったな！！」
『＿＿＿！』
振りかぶられるバットを屈んで避け、体勢を崩した男を足場に壁を伝って思い切り跳ぶ。
そして落下する直前に適当に拾った木材で他の男の顎を殴り、出口に向かって走り出した。
然し、多勢に無勢。
出口に着く前に囲まれてしまい、行き場が無くなる。
責めて少しでも逃げ切る可能性を作ろうと、手近な男の腹を蹴った。
「グェ！」
「この女！」
『ぁッ』
声にならない叫びと共に背中を殴られ、思わず倒れこむ。
立ち上がろうとするが、起き上がれない。
力を込めた左手の傷跡がじくじくと痛む。
血が滲んでくるように、傷が開くように。
「＿＿＿＿テメェら何、女一人で虐めてんだよ」
．
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね！私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい！ (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Cynic** | 作成日時：2020年5月23日 16時
