泥棒の犬嫌い ページ16
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『シロ君、返してきたよ』
「…おう」
短く息を吐いて横に座る夜空。
こうやってみれば何処にでもいる少女なのだから、益々泥棒だという事が信じられない。
だがまあ、以前に盗んでいるところを実際に見てしまったので疑うつもりはないのだが。
『暑いね。
…シロ君って受験生？』
「…まあ、そうだな。
どうせ大学はいかねぇし、それに対した高校にも行ってねぇから」
『ふぅん』
唐突な彼女の話題の振り方にも大分慣れてきた。
自分から聞いてきたというのに詰まらなさそうに返事を返す夜空に、左馬刻は「あのなぁ」と眉を寄せる。
だが夜空の視線は此方を見ておらず、公園の入り口の方を向いていた。
左馬刻も目を向ければ、丁度犬を連れた女性が入ってくるところで再び視線を夜空に戻す。
『…シロ君、公園出よう。
何処か違うところに行こう』
「は？
ちょ、おい」
『早く』
何処からこんな力が出てくるんだ、と言いたくなるほど強く引っ張られ、左馬刻は不満そうに立ち上がる。
早足で女性の歩く方向と反対側に抜けようとする夜空を見て、左馬刻は何かを察した。
「ソラ…お前、犬が無理なのか？」
『…犬程厄介な生き物はいないよ』
「…まじか」
少し躊躇ってから頷いた夜空に、左馬刻は段々と自分の口角が上がって行くのを感じる。
夜空は左馬刻がピタリと動かなくなったのを見て、不思議に思い振り向いた。
そして、肩を跳ねさせる。
鈍感な夜空でもわかった。
この顔は、何かを企んでいる顔だと。
「よし、ちょっと来い、ソラ」
『え、やだ、そっち犬いる』
「おら」
『！？』
ぐいと思い切り引っ張られ、夜空はバランスを崩す。
それを受け止めた左馬刻は、夜空を引きずるようにして女性のもとに歩み寄って行った。
「その子可愛いっすね、彼女が触りたいって言ってまして」
『言ってない言ってない言ってない』
「あら、イケメンねぇ。
大人しいから、触っても平気よ。
ほら、お嬢ちゃんも遠慮しないで」
無駄に顔のいい左馬刻はそれをフル活用して女性に取り込む。
それに気を良くした女性は犬を座らせ、今はいらない優しさを発揮した。
左馬刻が嫌がる夜空の手を掴み、犬に向けさせる。
夜空の全力での抵抗も虚しく、犬の鼻に白い指先が触れて。
＿＿＿＿ペロ
『ああああああ！？！』
「え？！」
「ぶぁっはっはっはっは！！」
犬に指を舐められ、夜空は叫んだ。
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね！私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい！ (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Cynic** | 作成日時：2020年5月23日 16時
