ちょっと変わっている ページ15
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『ちゃんとロックかけてある。
誕生日?
………ありきたり』
一人でどんどん個人情報を漁っていく夜空に、左馬刻は背けていた顔を戻す。
そして彼女が開いていた画面に、思わず彼女の頭を叩いた。
「テメ、何見てんだよ!」
『…この人、体で車磨く気だよ』
「いいからさっさと閉じろ!」
男性のネットの検索履歴から表示したのだろうが、大人な画面を開いてそれに素直に引いている夜空。
やめてやれ、あの男が可哀想だ。
見ず知らずの女子高生に見ていたAVを知られてしまうなんて可哀想すぎる。
左馬刻に叩かれた額を抑えながら夜空は渋々その画面を閉じ、写真のアプリとメッセージアプリを開いた。
『……あのお兄さん可哀想だね』
「は?」
『就職した企業がブラックで、一年目からこき使われてるらしいよ」
「だからああなってんのか」
そこまで見ると満足したのか電源を落とす夜空。
ホーム画面に写っていた金髪の男性が気になったが、夜空が携帯を持って立ち上がってしまったので黙って目を背ける。
財布と携帯を持って返しに行こうとする夜空の背に話し掛けた。
「…普通に返しにいくのか?」
『?
…嗚呼、別に篤志家じゃないからね、私は。
落ちてましたよって言って返してくる』
可哀想には思ったけど何もしないよ、と短い黒髪を揺らして男性のもとに歩いていく夜空。
左馬刻はその小さな背中を見つめた。
「…彼奴は何考えてんだろうな」
彼奴、とは夜空のことで、左馬刻は彼女について前より詳しくなったとはいえ、まだまだ知らないことは沢山あった。
最初は何故か左馬刻の場所を必ず見つけ出してきて、「ついてくるな」と言っても「だって楽しいから」とちょこちょこついてきた。
段々と追い払うのも馬鹿らしくなってきて、勝手にさせてやっていると時たま盗んだものを自慢げに見せてくる。
彼女の性格もあってか、何処か憎めないその愛らしさに左馬刻は絆されていたのかもしれない。
けれど、たまに見せる彼女の鋭さは野生のようで。
____守りたい、とそう思う気持ちに反して、彼女とこれ以上関わってはいけないという気持ちが起こるのは何故だろうか。
彼女の黒瞳に宿る複雑な感情の縺れを、左馬刻は解けなかった。
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます! (2020年5月23日 21時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね!私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい! (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年5月23日 16時