孤児院の少女 ページ12
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『＿＿＿＿ただいま』
暗い孤児院の玄関で、誰にも聞こえない様な声でぽつりと漏らす。
だが帰ってくる返事はなく、それどころか子ども達の明るい声も聞こえない。
それもそうだろう、現在の時刻は午後十一時。
子供は寝ている時間だ。
左馬刻と別れた後、夜空は新しい雇用主の所に行き契約条件を取り付けた。
決行日は明後日。
明日は下見などに出かけなければならない為、朝早く出て行く必要があるだろう。
夜空は真っ直ぐ奥の寝室に行き、そっと扉を開く。
その部屋には沢山の子供達がいて、其々が寝息を立てていた。
部屋の左奥には四つの布団が並んでおり、そこは山田兄弟が並んでなられる様になっている。
『…』
そっとそこに近づいて、仲良く固まって眠る弟達の顔を覗き見た。
其々目の下には黒子があり、可愛らしい寝顔もそっくりである。
一郎と二郎が三郎を囲む様にして寝ており、夜空は思わず笑みが溢れた。
『…可愛い』
そう囁き、一郎の短く細い髪に左手を伸ばそうとして＿＿＿＿
『＿＿ッ』
直ぐにその手を止める。
今の自分の手は、純粋な彼らに触れて良いほど綺麗なものではない。
夜空は行き場のなくなったその手を捲れていた彼らの布団に伸ばし、肩まで覆う様に布団をかけた。
ほかの子供達にも同じ様にかけて行き、足音を立てない様にその場を離れる。
「＿＿夜空お姉ちゃん？」
『！』
突然声をかけられ、背後を振り向けば可愛らしいウサギのぬいぐるみを抱えた少女が立っていた。
夜空はほかの子を起こさない様にその場にしゃがみ込み、少女と目を合わせる。
『シュンちゃん、どうしたの？』
「…寝れなかったの。
そしたら、お姉ちゃんが見えたから」
『そう』
少女の肩に触れようとする手を一瞬戸惑い、伸ばしかけていた左手の代わりに右手を差し出す。
少女の手を引いて居間に連れて行き、二人でソファに腰掛けた。
『そしたら、お姉ちゃんが寝れる用におまじないをかけてあげるね』
「おまじない？」
『そう、特別な魔法だよ。
いい？
お姉ちゃんがシュンちゃんにだけ特別に教えてあげるから、シュンちゃんがお姉さんになったら他の子にやってあげてね』
小さく、コクリと頷いた少女。
夜空はそれを見て小さく微笑み、彼女も頭を夜空の膝に乗せた。
規則的なリズムで体を優しく叩き、小さな声で子守唄を歌う。
天使の歌う様なその声に、少女の意識は自然と落ちていった。
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます！ (2020年5月23日 21時) (
レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね！私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい！ (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Cynic** | 作成日時：2020年5月23日 16時
