盗難癖 ページ11
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『それに私、これでも腕は良い方だから。
結構裏だと有名なんだよ』
何処か生き生きとした様子で話す彼女に左馬刻は目が離せない。
悪いこと、とわかっていてそれをやり続ける。
___その姿が、何故かとても美しく見えた。
「テメエは泥棒ってことか」
『そう。
…でも、泥棒やってる時が凄く楽しい』
嗚呼、そうか。これが原因だったのか。
時折見える彼女の異常性。
盗みに対する圧倒的な執着。
常人には理解できないような、その“趣味”に左馬刻は微かながら嫉妬を覚えたのだ。
『…孤児院の院長と弟達には暴露ちゃってるの。
だけど、この仕事を辞めたら園の経営も回らなくなるし、これくらいしか私が上手くこなせる仕事はないから』
「…そうかよ」
悪いこと、だというのは知っている。
それを理解してもなお、盗みを働き続けるのは彼女の為でもあり、孤児院の子ども達の為でもある。
それを止められる程、左馬刻は偉くなったつもりはなかった。
『今日この後ね、新しい雇い主と会えるの。
多分、一週間後くらいにやるのかな、一ヶ月に二回程度だけど、それでも十分儲かるからね』
そして、彼女は気付いているのだろう。
左馬刻が自分と同じように手を染める様な仕事に就いていることも。
気付いていて、彼女は態と口に出さない。
___左馬刻の仕事は、彼の望んでやっていることではないと、理解しているから。
左馬刻は決して他人に暴力を振るうのが好きなわけではない。
ただ、自分にはそういう仕事に就く才能があると理解し、妹の為に働いているだけ。
対して夜空の仕事は趣味の一環であった。
それを羨ましいと思う反面、憎たらしいとも思う。
「…変な奴には掴まんなよ」
『…?
分かってる』
「それ分かってない奴の反応だろ」
首を傾げたまま頷く夜空に、左馬刻は顔を顰め彼女の額を弾く。
「痛っ」と額を抑える彼女に思わず笑いが漏れてしまい、彼女もそれにつられて微かに笑った。
初めて見たその表情は、空にかかる雲の様に繊細で、溶けて消えてしまいそうな笑みだった。
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Cynic** - 豪炎寺修也推しさん» コメントありがとうございます。この作品も見にきてくださったんですね、とても嬉しいです。ご期待に添えられる様に頑張ります、応援ありがとうございます! (2020年5月23日 21時) (レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - こんばんは、毎度毎度すみません…。もう文字のフォントが素敵ですね!私の最推しの左馬刻の物語なので、楽しみに読ませていただきます。更新頑張って下さい! (2020年5月23日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Cynic** | 作成日時:2020年5月23日 16時