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「貴方が私の英雄なの？」
初めて出会った時、彼女は澄んだ声でこう言った。
＊＊＊＊＊＊
一切窓がなく、光の届かない場所。
立ち込める異様な匂いは、仕切りとなっている鉄格子が原因か、それとも至る所にある血痕か。
外から完全に遮断されたこの地下牢で、無邪気に笑う少女が1人。
「貴方、名前は？」
「…………伊黒、小芭内」
「ふーん、珍しい名前。伊黒さんでいい？」
「…………………あぁ」
つい先程鉄格子から解放した少女は完全に訳ありそうだった。
まぁ地下牢にいる時点でそうなのだが。
掴めば折れそうな程痩せ細った手足に、体中にある痣や切り傷。
腰まで無造作に延びている真っ白な髪は、清潔にすればさぞ美しく輝くことだろう。
「じゃ、伊黒さん。私貴方に一生ついてってもいい？」
「…………………は？」
極めつけはその顔。
眼は澄んだ青紫色で、肌は驚く程白い。
長い髪で左眼は隠されていたが、それでもなお息を飲む程整った顔立ちをしていた。
「駄目だ」
「なんで？」
「お前は俺のことを何も知らないだろう」
「うーん」
そう言って少女は少し考えるふりをする。
やがて思いついたのか、ぱっと顔を上げて言った。
「鬼を倒す正義の味方って感じ？」
「………お前、鬼の存在を知っているのか？」
「うん、絵本で読んだよ」
「…………………」
なんだろうか。
この少女は尋常ではない。
尋常ではない雰囲気をまとっているのにこんなにも飄々としているのは、わざとではなく単純に幼いからなのか。
「で、どうなの？」
「……………前半は正解、後半は………………間違いだ」
俺は正義の味方なんかじゃない。
正義の味方を名乗っていい人間じゃない。
さっきだって…………
「ふーん……………でも、私にとっては正義の味方だよ？」
「は？」
少女は、幼い子供の様に首を傾げる。
やがて少女はふっと真剣な瞳で俺を見た。
「見て」
そう言って少女は左側の髪に触れる。
そしてその髪をすっと持ち上げた。
「…………！」
髪で隠されていた少女の左眼は、存在していなかった。
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桜舞(プロフ) - あぁごめんなさい！訂正しておきます、ありがとうございます！ (2021年5月3日 9時) (
レス) id: faa91006d3 (このIDを非表示/違反報告)
小桜＠SOS同盟 - 初コメント失礼致します。あの、11話の煉獄さんの訃報のシーンなんですけど、弐ではなく、上弦の参です。 (2021年4月29日 11時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜舞 | 作成日時：2021年3月18日 12時
