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67話 ページ19

「………ッは」
「起きましたか…。気分は?」
「……にほんごう、会いたい」
「会話を成立させてもらっても?」
「気分はよくない。にほんごうに会いたい」
「はァ、わかりましたよ。少し待っていてください」


外の景色は夕暮れ色で。部下が来ていたのは真昼間の事だったから大分気を失っていたンだと感じた。腹の奥にあったあの気持ち悪さは、ほんの少しまだ残っていたが、それを上回るほどの虚無感、寂しさに、少し言葉が舌足らずになった。

今看病していてくれてたのは宗三。困ったような顔をしながら日本号を呼びに部屋を出ていったのが見える。


ホルマリン漬けには、イヤな…記憶しかない。いやな記憶しかないッていうのを、部下も知っていたから……話すのを渋ったのだろう。

「はいはい、お呼びか?姫様よォ」
「………スマン、また。迷惑かけた。……弱くて、悪かった…」


ぽつりと呟けば、日本号は少し口を閉じた。長年ともに過ごした相棒だけど…失望、されたろうか。日本号なら、そんな事ないだろうと、何時もなら思うのだろうけど…今は無性に怖くなって仕方がないのだ。


「……そうだな、お前さんはまだまだ弱い」
「っう…」


やっと口をひらいた日本号の言葉は嫌に重くのしかかって、くぐもった声が喉の奥から出てきた。
何もかもが弱っているのか、その一言に情けないことにじわりと涙ぐんでしまって。

その様子にぎょっとした日本号は慌てたようにアタシの頭を撫でながら話し始めた。


「なにも、あんたの思ってるような失望だとか、そんなンじゃあない。何年一緒にいると思ってるんだ?あんたに見込みがないと思ったら、俺はとっくに隣に居ないぜ」
正三位、三名槍日本一の槍の位は高いんだぜ?

と冗談めかしく笑いながら話を続ける。


「あんただけが弱いワケじゃない。俺だって刀剣達は全員弱い所から始まるンだ。付喪神にだって神の端くれ。神とて欠点はある。じゃあ…A、人間だって完璧なヤツなんざ居ないんだ。それは、分かるだろ?」
「……ん」


一つ一つ確認するように話しかけてくる日本号に、此方も一つずつ頷き返す。そのたびに日本号は安心したような表情を見せて口を開いていくのだった。

日本号がアタシを安心させるときの声音は、本当に優しくて。何時も酔っぱらってのらりくらりとしている人には思えない程の安心感とやさしさと…沢山詰まりすぎて供給過多で困っちまう。

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病蛟(プロフ) - 勇者の人さん» お褒めの言葉をいただきありがとうございます…自分自身も楽しみ、かつ読者にも楽しんで感動して頂けるような小説をモットーに書いていますので、とてもありがたく思います。体を気にかけていきつつ投稿させていただきますので楽しみにしていてくださると幸いです。 (2021年9月22日 21時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
勇者の人(プロフ) - 文章が綺麗でとても読みやすく、読んでいて感情が揺さぶられたりと素晴らしい作品ですね。応援しています、これからも無理しない程度に頑張ってください。 (2021年9月22日 2時) (レス) id: 0ba614db75 (このIDを非表示/違反報告)
病蛟(プロフ) - もっちーさん» 一期一振に関する誤字を教えていただき有り難う御座います。修正作業に取り掛かります故…これからもこの作品をどうぞよしなに、楽しめるような続きを投稿させていただきます。 (2021年9月11日 22時) (レス) id: 1220734e66 (このIDを非表示/違反報告)
もっちー(プロフ) - はじめまして!続き楽しみに待ってます!!それと一期が一護になってます! (2021年9月11日 19時) (レス) id: 5828451b09 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:病蛟 | 作成日時:2021年8月18日 23時

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